ゴミを漁ったり、鳴き声がうるさいと言われたり、不吉の象徴とされたり、何かと嫌われがちなカラスですが、本作はそんなカラスの可愛らしい一面が詰まった観察記。童謡のような柔らかくテンポの良い文章が読んでいて気持ちいいです。
作者様とカラスの掛け合いが面白いです。とても観察眼が鋭く、普通の人なら見逃してしまいそうなエピソードを楽しく語ってくれます。
本作は、私たちに身近な存在である、カラスの観察記録であると同時に軽妙な筆致のエッセーでもある。野生動物として適切な距離感を保ちつつ、時にはカラスと「カー」「カー」と、会話までできてしまうのは、作者様の観察眼の鋭さと感性の繊細さ、そして何よりカラスへの愛情のなせる業。カラスと作者様双方の挙動に可笑しさとかわいらしさを感じる。同時に、童謡を聞いているかのように感じさせる、文章の独特のリズム感もすばらしい。読んだ後には、身近な生き物への愛情を感じ、温かな気持ちになれるだろう。
読む音楽。 ステップを踏むような文章は、読むうちに脳内に流れ楽しげなメロディーを奏で出す。 「文章を読むこと自体」が一つの快楽たりえると思い出させてくれる作品。