65話 どこでも会議。念話ならね。

『そうですね~。敵の超光速移動は戦闘時に有利な場所に素早く移動するような、適宜使用はしてなかったですからね。我々も超特大魔法的なものとは予想してましたよ~』


「うひゃっ! ファナ艦長!?」


話をどうやってか聞いていたのか判らないけんど、ファナ艦長が念話で割り込んで来た。


皆は慣れっこなのか、驚いたおいらに怪訝な顔。

ああ、通常運行なのね。コレ。


『ちょと皆さんお話しましょうか。熱いうちに』


お話って何すんだろ?


メリッグ副隊長が、上を指差すと甲冑兵の皆が頷き、居住区の上に茂る樹の枝の上に

飛び上がり、移動する。


何がなんだかわからず、広場に置いてきぼりになったおいら。

住民達の目線が痛いっす。


『猿、ちょいと艦長へ報告と、会議だ早く上へ来い』


樹の上に登り、太い枝の上に陣取ったカーナから念話が来た。

皆もそれを囲むように適宜枝の上に陣取っている。


『会議って、どゆことですか?』


『我々のやり方は、軽い意見の出し合いなら思いついたら即会議。定例会議は別だけどな』


お話って会議かよ。簡易念話だから判らなかったぜ。

念話あるから何処でも会議出来るのか。便利やなぁ。


『でも移動する必要ないんじゃ』


『移動せず、その場でって場合も多いが、廻りに人多いと落ち着かない。場所があれば其処へ集まる。今回はそれだな』


あー、兄貴と仲間達が体育館裏でだべってたような感じか。他校との喧嘩の会議もしてたなぁ。そういえば。


足場障壁を展開しつつ、トントンと飛び上がり、居住区の樹の上に。

皆は各自適当に樹の枝の上で座っている。

おいらは空いていたカーナの横の枝に陣取る。


『皆が樹の上に上がったんだから、猿もすぐ来れば良いだけじゃん。疑問点ある?』


テルルが突っ込みを入れてくる。


『まぁその通りなんだけんど。疑問点はその場で聞いといた方が上手く廻るんよ』


『猿が正解だ。疑問に思ったら面倒臭がらず聞け』


指揮官モードに戻ったカーナが鋭く言い放つ。


『まぁ、それはそうだがよ』


『猿くんは理屈っぽいから参謀役が向いてるね』


『いやいや、理屈っぽいだけで、参謀とか無茶ですって』


慌てるおいらに皆が笑う。


『そうですねぇー。疑問を持つ資質は指揮官には重要ですよー。記憶水晶による軍事情報の転写、許可しちゃいますかー』


『ファナ艦長、我々の価値観が猿の深層に定着するのは反対します』


カーナがマジモードで艦長に反論してる。


『冗談ですよー。私も猿くんの価値観維持派ですしー』


『おいら的には記憶水晶歓迎っす。勉強する必要ないとか最高っす』


『猿は本当にそう思うのか? 記憶転写は価値観の深層意識への刷り込みでもあるんだぞ』


カーナがガチモードで問い返して来た。

おいらの価値はカーナ達と違う異質な価値観にある。

普通に本使って勉強するには深層意識への影響は微細らしい訳で……


『すんません。普通に勉強します』

『よろしい』


どうやらおいらの答えは合ってたらしい。

カーナが満足そうに笑う。うおー覇王の笑いだ、格好良いぜ!


テルル達数名の甲冑兵達は、木の葉のさざめきと緩やかな風の中、皆面頬は上げそれぞれ太い樹の枝の上で、カーナを中心に扇状に適当に樹の枝の上に陣取っている。


「こんな場所で会議かぁ」


価値観は確かに違うよなぁ。おいらの価値観じゃこんな場所で会議とかあり得ねぇ。


樹上から下を見ると居住区の樹と同化したような家々が小さく見える。

緩やかな風と木の葉のさざめきが心地よい。


『猿、互いに少し距離があるし念話で行くぞ』


『うす。了解』


『あ、え、わたしもですか?』


会議用にグループ設定された念話参加者の中にプリカの念話が入って来た。

箒の整備中だったようだが、参加要請されたようだ。


『学術方面で優秀と聞きましたー。学徒兵側からの意見も欲しいから強制参加ですー』


ファナ艦長の無茶振りである。


『プリカは学術成績も優秀と聞いているし、猿の文明に関しての考察や報告書も極めて参考になった。私からも参加を要請する』


『は、はい! わ、判りました!』


現状、おいらの事を一番知ってるのはプリカだし、おいらの記憶も幾つか覗いてるので機械文明への理解度も高い。彼女も参加に納得したようだ。


『だから、彼の記憶を全て浚って分析すべきだったのだ』


おぅ。ジンブルムも参加かぁ。 念話でも偉そうやな。


『全ての記憶を浚ったら、人格や記憶に問題でるどすえ。下手すれば廃人どす。容認できまへん!』


ケヒー研究室長の念話も来た。ちょいと本格的な会議になってきた。

しかし、廃人とかマジかよ。ジンブルムでなく、ファナ艦長が指揮官で良かった。


ひと段落して、ファナ艦長が会議の開始を宣言する。


『さてとー、敵は電磁場スー・ダル・ラッガを使用した索敵を使用ということを猿殿の推察ですがー』


電磁場スー・ダル・ラッガは遅すぎる。特異点の予想間違いだろう、そもそもこいつは学生というか、一般人だと言っていたではないか。軍事技術に造詣があるとは思えん』


ジンブルムは速攻否定して来た。


『猿くんの居た場所は、まだ惑星もロクに離れられない技術力だろ。同じ機械系の文明にしろ、星を渡るまでになった機械の文明が同じ探知技術を使ってるかね?』


メリッグ副隊長の鋭い指摘が来た。確かにそうかもなぁ。


と、れんが強烈な念話とともに会議に乱入して来た。


『黒銀の巨艦は、あの距離で我の竜撃ドラゴンブレスの着弾まで回避行動を取らなかった。探知技術が電磁場スー・ダル・ラッガというのはおおいにあり得る。

探知魔法なら即時に竜撃ドラゴンブレス発射を知る事が出来るが電磁場スー・ダル・ラッガならほぼ光速の竜撃ドラゴンブレスの発射探知と着弾は同時となる』


廻りを見ると、れんの強烈な念話に士官級以外は無茶びびってる。

おいらはもう馴れたけど、結構これきついよな。


にしても、あの小悪魔竜が『我』とか使うのはちと笑えるけんど。


「あいたっ」


れんの軽い電撃がおいらを襲う。


「お前も学習しないなー、猿」


れんにお仕置き喰らったおいらをテルルが生暖かい目で見て来るが、考え読まれるんだからどうしようも無いじゃん。


『敵の探知技術が電磁場スー・ダル・ラッガならば戦場で使用するのは厳しい。

竜撃戦は数光秒の距離で撃ち合うが、探知技術が電磁場スー・ダル・ラッガならば、敵が撃ち込んだ場所にはもうそこに我々は居ない。我々の方が圧倒的に有利だ』


ジンブルムが吼える。


『飛竜や魔女隊の交戦距離なら電磁場スー・ダル・ラッガでも十分というか互角だった。遠距離砲戦ならばれんの雷撃の着弾も数秒掛かる。互いに回避行動しながらならばそう着弾しなくなる。探知はこちらが有利なのは認めるが舐めるべきではない』


と冷静にカーナが返す。


探知技術ではこっちが有利なんかね。いや、どうだろう?


『電波は機械任せで常時展開、時間差気にしなければ星系内距離くらいなら探知すると思うっすけど』


……宇宙観測で彗星見つけたとかやってたもんなぁ。


『広域探知レベルを常時展開はきついでありますなぁ』


プリカに軽く念話して聞いた所、広域念探も人力だそうだ。


『だが、それ意味あるのだがよ? 距離によっては数時間前に其処に居たというだけの情報がよ』


『常時展開の広域探知ならば、艦隊の集結や物資集積箇所の発見に役立ちそうですねー』


『双方一長一短か。猿、他にはもうないか?』


うーんと考えるおいら。あ、そういえば。


『光の反射もかなり気にしないと駄目かもっす』


『どういう事だ?』


『電脳で写真を解析して小惑星を光学観測とかで見つけるとかあったっす』


電脳で解析って所を頑張ってイメージして念話で送る。


皆がウゲッという感じになる。


『……ずっと宇宙そらを観測し記録し、微細な変化を電脳なら見い出せるのか。我々でもできなくは無いが、面倒だな』


『とにかく闘って生き延びて、情報を集めていくしかありまへんなぁ』


『そうだな! 少なくとも敵は圧倒的ではない!』


カーナがファナ艦長と個人念話をした後、立ち上がり皆を見回す。


『1 電波遮蔽魔法の早期開発、展開

 2 れんの姿を隠す幻影魔法の大規模展開

以上を早期に実行を提案します!』


『了承しますー』


『『『了解!』』』


カーナの気合入った念話で皆の気持ちが盛り上がる。

さすがカーナ。この辺りも兄貴に勝るとも劣らない。凄いぜ!

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魔道星戦-星間戦争にパシリ三下が召喚されて勇者とか呼ばれてもマジ困るんよ。でも超強美少女に可愛い魔女、小悪魔性格の竜に囲まれちょい嬉しい ハンターシーカーアルゴリズム @3fqv7i2buzdlk

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