64話 カーナを女の子扱いしたら殴られたっす!
居住区を覆う長さ1kmはあろう天蓋は居住区全体を蓋のように覆い、甲板とも繋がっていやがる訳で……
カーナを表示する赤点が甲板から居住区に来たぁぁぁ!
皆甲冑着てるから、それは把握してる。
「いや、無茶でしょ、艦内飛ぶとかさ!」
「馬鹿だろ、カーナ」
「やっぱ無茶なんすね」
おいらの言葉に皆が頷く。
止める間もなく、カーナの飛竜が物凄い速度で甲板方向から垂直に飛翔して来たかと思うと、捻るようにその体を捻らせ物凄い風を撒き散らしながら居住区へ突入して来た!
おいらの上を樹々の枝をバックにカーナの飛竜の巨大な影があっという間によぎって行く。
突入して来た飛竜の風圧で居住区に物凄い風が吹き荒れる!
大人達は悲鳴、子供達は甲高い歓声を上げている。
カーナの飛竜は急減速し旋回、着地しようとしている。
が、居住区の上の濃密な樹々の枝の海だ。
摺り抜ける事が出来ず、カーナの飛竜は枝に絡め取られるように盛大な音を立てながら減速する。
そりゃあもうバリバリと。
「うひゃ、あの速度でぶつかっても折れない枝凄いっす!」
おいらは立ち上がり、上を見上げ、驚く。
「艦内の樹々は
メリッグ副隊長にどやされおいらも建物の影に退避。
プニプニは勝手に樹の後ろへ退避して震えてる。知能高ぇなぁ。おい。
「カーナでも、枝に引っかかっちゃてるんだな。無理な物は無理なのか」
おいらは少し残念に思う。
兄貴なら、こんなん引き千切ってでも突破するだろうなぁと頭の隅で考える。
住民達は悲鳴を上げながら飛竜の落ちて来そうな広場から逃げ建物の影に隠れた。
「陸戦隊は退避した住民の前へ行け。防護障壁展開!」
「「「了解!」」」
テルルの指示の元、甲冑兵達が住民達の前に素早く移動、淡く輝く障壁が展開される。
テルル達は錬度が高く動きが素早い。やるなぁ。
それはそれとしてだ。カーナの飛竜は大きい。
ぶっちゃけ、家より大きい。
そんなのが樹々に翼を絡め取られ、落ちて……きたぁぁぁ!
物凄い轟音と土煙を上げ、広場にぐしゃりと落ちた。
そりゃもうぐっしゃりと。
落下とともに風が舞い、おいらの横を通り抜けていく。
大人達は悲鳴、子供達は大歓声を上げる。
飛竜はもろ頭部から墜ちていたが、全く平気のようだ。
「頑丈だなぁ」
「飛竜は一応、竜の眷属だからね」
カーナはずり落ちるようにして鞍から降りる。
片膝を付き、華麗とは言えない姿である。
「カーナ隊長! 何やってるの」
「いや、はは、猿が心配で少し無茶した」
「馬鹿じゃん、カーナ。猿は大丈夫って報告したじゃん」
カーナは皆に無茶過ぎと言われ頭を搔きながら凹んでいる。
カーナは何時もの超越した感も消え、ちょと間が抜けた感じ。
おいらにも普通の女の子に見える。なんだかなぁ。
弱ってる奴には手を差し伸べろや。兄貴の教えっすね。
「大丈夫っすか」
おいらが片膝ついたカーナに手を差し伸べると、カーナは驚いたような顔をし、ちょと横を向くと、おいらの手を掴んだ。
おいらはぐいっと持ち上げ、カーナを立ち上がらせる。
「意外と軽いっすね」
「当たり前だ。女の子だぞ一応!」
そう言えばそうだった。兄貴分として見ていたからなぁ。
「怪我はないっすか?無茶は駄目っすよ 」
「ん、ああ、んあ、無いぞ」
カーナはみっともない墜ち方をして恥ずかしかったのかちょと顔が赤いっす。
そんなおいら達を見てメリッグ副隊長が目を丸くしている。
「カーナに助けの手を出すなんて変わってるね、猿くん」
「あたい、カーナが手助けされるの初めて見た」
「そう言えばそうだがよ」
テルル達も障壁の展開を止め、こちらへ向かいながら軽口を叩いて来た。
「確かにカーナは、強いっすもんね」
おいらは納得したが、カーナは不満そうな顔。
「何度も言うが、わたしだって女の子なんだぞ」
口を尖らして反論するカーナは確かに女の子っぽい。
「模擬戦とはいえ十二騎の飛竜一連隊と単騎で戦って圧勝する奴を女の子扱いは無理だよね」
凄ぇな。 確かに女の子って呼ぶのは無理だ。
「やっぱ、カーナの兄貴と呼ばせて下さい!」
「その呼び方はよせと言った!」
脳天にカーナの拳を喰らうおいら。
皆は大笑い、なんか知らんけど、住民の皆も笑ってる。
皆は適当に流してるけど、おいらに回避する暇も与えない速さの突っ込み鉄拳入れられるのは兄貴くらいだったんだよなぁ。
と、その時、鳥の警告音声のような警戒の警告音が艦内に流れる。
敵を発見したらしい警告音だ。
皆が一気に緊張する。
カーナが一気に厳しい顔になり、念話で指揮室と通話している。
背筋を正したその姿に陸戦隊もおいらもシリアスモードだ。
が、すぐに撃破との広域念話が流れて来た。
「ひゃほー撃破だ撃破!」
テルルが踊りながら喜んでいる。
「敵さんの威力偵察か?」
「警戒範囲を確認しに来た感じだね」
「どうやって我々を見つけた? 魔力封鎖結界に認識阻害結界は効いてるハズだ。探知されるのも難しいはず」
カーナは厳しい顔だ。皆も意味を理解して重苦しい雰囲気になる。
魔力封鎖結界に認識阻害結界……? おいらははたと閃いた。
「電波の反射阻止みたいなのしてるすか?」
「電波?」
皆が聞き返したのでおいらは思考を纏めて
「電波っつーとこんな感じ」
おいらも正確な所は良く判らんので昔、授業で見た『電波とは電場と磁場の変化を伝搬する波の一種』とかそんな感じの教材絵を気合入れて思い出し、ふんすと集積念話で送る。
「何だこれ良く判らん」
「同意だがよ」
「
カーナは意味を理解したようだ。
メリッグ副隊長もそんな感じっすね。
でも一つ疑問が。
「遅いって、どういう事っす?」
「
「なる。確かに」
「んじゃ、緒戦に一気に近づいて接近戦挑んで来たのは砲戦の為だがよ?」
「それもあるだろうが、あれは亜光速弾を発見させない為の煙幕みたいな役割の艦隊だろうと判断している。敵は、あれの着弾後、即撤退をしたからな」
「
「厳しいが、可能性はあった……用心深い敵だ」
カーナの言葉に皆が厳しい顔になる。
「敵の艦隊、いきなり近づいて来たろ、あたい。あれもヤバいと思うんだ」
テルルが厳しい目でカーナに問う。
「そうそう上手くは行かないと思う。我々が軌道上に居て殆ど動いてない状態だから接敵出来ただけで、動いてる時にあれが出来るとも思えん。
へぇ、そんなんやってんだ。いや気づいてたけどさ。
「あと、あれはでっかい燃料タンク取り付けてたし、燃料をかなり使うみたいだから、そうそう使えないと思うっすよ」
『そうですね~。敵の超光速移動は戦闘時に有利な場所に素早く移動するような、適宜使用はしてなかったですからね。我々も超特大魔法的なものと予想してます~』
「うひゃっ! ファナ艦長!?」
話をどうやってか聞いていたのか判らないけんど、ファナ艦長が念話で割り込んで来た。
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