「D.C.」って、なに？

　ある日の放課後、最近寝不足が重なっていた飯島圭太は、家に帰らずに教室でぐっすりと寝てしまった。すると死んだ幼馴染が夢に出てきた。景色は7年前の、病室の片隅。「私は世界一のバイオリニスト、そんでけーちゃんは、世界一のピアニスト！」——幼馴染の沢城音波の、懐かしい口癖だった。懐かしい夢だった。
　あれからもう、7年が過ぎた。圭太はもう、ピアノなんか弾いていなかった。
　そんな夢から覚めた圭太が、家に帰ろうとそそくさと教室を出ると、ふとバイオリンの音色が聞こえてきた。
　バイオリンと呼べるのかどうか、それぐらい下手くそで、酷い雑音だった。
　聞いていられない。近所迷惑だ。
　そう思うどころか、むしろずっと聴いていたい。
　圭太はその雑音に、なぜか胸を打たれた。
　幼馴染は死んだ。これは夢の続きじ…続きを読む