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何回も何回も、同じ服を着たメスの人間が食べ物と水を持ってきては置いてあるものと交換していく。
いつまで続けるつもりだ、よくもまぁ飽きないものだな。
痛みは大分良くなり体に巻きついたものは取られたが、代わりに首に変な輪っかが付けられた。
この時ほど人間と会話が出来たならと思った事はない。
もし通じたのなら、全動物達を代表して1つだけ人間に言ってやりたい。
何の道具か知らんが、コイツは付けていると、
人間だって痒くもなるんだろう?
だったらこの苦しみを考慮しようと、少しはその自慢の頭とやらを使ってくれ!
どうしてこんな大事な事に気が付かないのか・・・
もしかすると人間は結構馬鹿な生き物なのかもしれない。
「もう!これ本当にうっとおしいったらないわ!この私にこんな不細工な物を付けるだなんて、信じられない!水もろくに飲めやしないじゃないの!」
ほら、隣の女性もご立腹のようだぞ人間。
「あの・・・余計なお世話かもしれませんが、輪っかを水受けの下に通す様にすると水が口元にきますよ?」
「あら、本当ね!親切にありがとう。艶やかな黒毛の紳士さん。
彼女の真っ白な長毛は何処にも絡まることなく伸びていて、紗綾さんの彼女への想いが伝わってくるようだ。
だが、ここに居るという事は彼女にも必ず理由がある。
彼女がそっと見つめるお腹の下辺りには、自慢の美しい毛が刈り取られていた。
「とても嬉しい言葉ですが、貴女の様な美しい猫に傷モノの俺はとても釣り合いませんよ。貴女とお話出来ただけでも俺は幸運です」
そう言って短い太ももを上げて見せると、彼女は憐れむどころか笑ってみせた。
「私はね、紗綾が大好きよ。彼女は私を1番に考えてくれるの、自分自身を置いてね。だから私は私が誇らしいわ――
どう?私、美しいでしょ?」
くるりと檻の中で回った彼女は、まさに息を飲むほど美しかった。
暫くして、彼女はさっていった。
遠くで聞こえた声はとても幸せそうだった。
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