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外の世界は懐かしさと厳しさで満ちていたが、母から教えられていた事や訓練がとても役に立ち、俺はなんとか猫の世界で生きる事が出来ている。


縄張りさえ掴み取れれば、後は食べる事を考えていればよく、慣れれば苦しさは無くなった。

子孫も残せたし、人間の巣を出た事は間違っていなかったと思う。

こっちの方がずっと体に馴染む。


そう思った時だった。


『フゥァァァァァァァァ!!グゴンッ!!!』




強い衝撃が2回して、世界が横を向いている。


「ひゅー、ひゅー」


おかしい、息が上手く吸えない。

体が熱いし、体中勝手に力がこもって固い石みたいだ。

今度は揺れてきた、血の匂い。

瞼が重い・・・俺は死ぬのか。




「それでアイツがさぁ、うわっ最悪!何か轢かれてんじゃん!気持ち悪りぃ」


「猫だ!!つばさ、俺の鞄頼む!」


「ちょちょちょ待てって大河たいが!そんなもんほっとけ、菌伝染ったらどうすんだよ!!」


「まだ息してる!大丈夫だぞ、俺が助けてやるから!絶対!!」



※ ※ ※



ここは、何処だ?

真っ白だ、ツーンとした匂いがする。

この匂いは知ってる気がするけど・・・


「先生、意識が戻ったみたいですよ!」


分かった、ここは小春が前に連れてきた所だ。


「おぉ!あの怪我でよく頑張ったもんだ。お前さんは強運の持ち主らしいな!余程日頃の行いがいいのか?もしくは前世がスーパーヒーローだったりしてな。なんて」


そして俺はコイツが嫌いだ、威嚇してやる。

ん?何だ?上手く立ち上がれない・・・


「おいおい、まだ怪我が治りきってないんだ大人しくな。あと、その足の事もある。無理をして怪我を重ねられたら、たまったもんじゃないからな」


足?

痛む上半身を起こし、自分の体を確認する。

体中何かが巻かれていてよく見えないが、これだけは一目で分かった。



俺の後ろ足が1つ足り無い。



「アゥー・・・アゥー・・・」


こんな足で、俺はこれからどうやって生きてゆけばいいんだ・・・

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