悪役たち
○ガンドルフ
ヴェルダンの王子。そう思いたくないが王子。あと、ボスチク第一号。
と言うのはさておき、小悪党キャラこそ名台詞が付き物なのが恒例と言う奴で、本人のセリフではないが「あなたたちはケダモノです」だけで彼はその名を遺す事に成功した。まあ、後は
〇シャガール
「無限なものは二つあります。宇宙と人間の愚かさ。前者については断言できませんが」
アインシュタインの名言である。
シャガールと言う存在の行動は、欲望に取り付かれたとか、マンフロイに操られたとか言うにしてもあまりにも不可解だった。
いや実際には自分こそ王様なのだから全員へーこらしろ、黙って言う事を聞けと言う話なのだが、「アグストリア諸侯連合」と言う土地柄で独裁者・絶対王政をやるのはどうしても無理がある(と言うか絶対王政自体刀剣を持って戦う騎士と言う概念が没落した時代の政治)。
擁護する点があるとすれば、ミストルティンがアグストリア王家でなくノディオンと言う家臣の手に渡ったまんまなのがおかしかったと言えなくもない(ノディオン家に嫁いだ人間が聖戦士の血を色濃く受け継いだ)。その時点でその子供を引っこ抜けばこんなことにならなかったのでは……と言うのは無理矢理な相談でありたられば論でしかないのだろう。
○エルトシャン
悪役じゃねえだろ!とか言いたい気持ちはわかる。
だが結局の所、彼は少なくとも戦犯ではある。
そして何より、シャガールの無限と言うべき愚かさを見抜けなかった。
それこそ民の「王になってもらいたい」と言う言葉を聞き入れていれば、少なくともアレスがセリスを親の仇と思いこむ事はなかった。
詰まる所、シグルドも甘ければ、キュアンも甘いし、彼も甘かったのだ。それが通るのが一般的なファイアーエムブレムであり、通らないのが聖戦なのだろう。
○アンドレイ
神器を使えないがゆえに……と言うのは安易かもしれないし、男児なのにどうして……と言うのもまた違うかもしれない。
だが正直な話、ブリギッドはしょうがないとしてもエーディンからも話が出て来ないし父親のリング卿とも不和であったと言う事は、それこそ家内で孤立していた可能性がある。
自業自得なのか、それとも末子ゆえにないがしろにされたのか……と言うのはただの身びいきかもしれない。
まあ「トンボとり」発言の時点で小悪党なのだが!
○ランゴバルド・レプトール
正統派の悪役二人。だがそれだけに、キャラ的に負けている感は否めない。二人して美味しい所を獲りに行ったつもりなのに事実上背中を刺されたも同然の死に方であり、ましてや子どもや孫に長男・孫がきっちりしっぺ返しを食わされている辺りがどうにも小物臭・かませ犬臭がぬぐえない。
いわゆる真のラスボスの前の、自称ラスボスと行った辺りか。
(第二部)
○ブルーム
何だったの感がどうしてもぬぐえない。なぜなら、
1:「アグストリアの王にするって言ったな。あれは嘘だ」となった父親
2:どんなに非道を働いていたとしても、嫁がそれ以上。
3:8章で一弓兵にビビる。
4:と言うか子どもや姪に強く言えない。
そういうわけでどうしても悪人ではなく、ただの悪役にしか見えない。
と言う訳で私の脳内ではレンスターの住民に対して無理矢理威張っている、帝国へのご機嫌取りのために圧政のふりをしていると言った感じのキャラになっており、そういうわけであだ名は「日和見王」。
彼も結局は、時代が時代ならまともに過ごしていたかもしれない。
○イシュトー
初めての悪人ではないボス……と言う立ち位置だが、正直な話今思うとガルマ・ザビであり、戦場でラブロマンスをやっている場合かよと言いたくなる……がちょっと待て。
散々こっちだって同じ事をやって来たし、やっているのだ。あらゆる意味で立場が違えば……であり、そういう意味でもっとも「らしい」ボスなのかもしれない。
○トラバント
悪のカリスマ。最強の俗人。泥水を呑んで何が悪い。全てはトラキアの民にたらふく食わせるためだ!
そう割り切っている人物であり、そう考えると実に格好良い。と言うか、キュアンと国が逆だったら絶対キュアンは同じ事をやっていた。フィンには怒られるかもしれないが、私はそう断言する。
それだけに9章における暴走、と言うか老いは正直悲しかった。ハンニバルの裏切り続けの果てと言う見識にはやや異を唱えたいが。
○アリオーン
騎士の誇りと言えば体裁はいいが、そんなもんなんぞ犬に食わせて来た父親の事を思うとどうにも悪い意味でエルトシャンの同類項である。
エンディング後の彼がどうなったのか、本当に誰か教えてもらいたい。
○ヒルダ
このゲームにおける最大の悪は誰かと聞かれたら、私は彼女の名前を上げる。
なぜかと言うと、破壊や殺戮に目的を感じられないのだ。
破壊のための破壊、殺戮のための殺戮。
例えばティルテュを殺した事に対しても、「義父の仇であるシグルドに与したから」とか言う極めてごもっともな大義名分のひとつも語っていない、ただただ快楽の思い出として語っている。戦争とか、ロプト教とか、昼ドラとか、そんなもんを超越した狂気である。
もしイシュタルに責めがあったとすれば、この人間を放置していた事であろう。
○アルヴィス
もし彼が暗黒神の血を引く者として素直に刑を受けていたらどうなったか。
ヴェルトマー公爵家取り潰しまでは確実だろうし、その後もおそらくはあいつはどうだ、こいつは違うんじゃないかととんでもない大騒ぎが始まり、結局は似たような展開になっていた気しかして来ない。
いったいどこでどうしてその血が入ったかは横に置くとしても、結局彼もまた「時代の流れに押しつぶされた人」でしかないのだろう。と言うか彼の唱える、おそらくは絶対法治主義と言う政治がなされていればセリスたちの出る幕はなかったと思われる。ああ、ダナン辺りは粛正されてそうだけど。
○ブリアン・スコピオ
完全な被害者、としか言いようがない。と言うか二人そろってわざとらしい悪人顔と言うか老け顔のブリアン、コピペのスコピオ。イシュトーレベルまで引き上げろとは言わないけど、もう少しあったんじゃないですかね。
○イシュタル
立場が違えば……の筆頭格だろう。第二部は第一部より悪役に理のあるケース(ない場合は全くなくなるが)が多く、と言うか彼女の場合は全く非がない。
非があるとすればただ「ユリウスに付いた」一点であり、兄のイシュトー以上に責めのない人物である。
従妹との会話や様々な描写を見る限り庶民からさほどヘイトを集めておらず、あるいはあっさり投降すれば生き延びられたかもしれない。まあそう考えると、彼女もまた悪い意味での「騎士様」だったのだろうか……。
○マンフロイ
真の黒幕であり、全ての元凶。最後の最後にユリウスの力を恃みすぎてミスを犯したものの、そこまではほぼ完ぺきだった。
「ユリウス様……ロプト帝国をどうか……」
私がクリアできたファイアーエムブレムが外伝と聖戦しかない以上一般化はできないが、ジュダ(「ドーマ様の力を知らぬ愚か者め……後悔するが良いわ……」)同様彼の死に際もまた潔い。
もちろん行為そのものに対してはまったく同情に値しないが、それでも彼は紛れもなく時代を動かした存在であり、まぎれもないカリスマ、殉教者であった。
○ユリウス
あらゆる意味で「道具」でしかない。
元々は気弱な好青年であった彼は、マンフロイのための道具、ロプト帝国再興の道具に過ぎなかった。トラバントのような良い意味で俗物を極めた悪役と違い、マンフロイはどこまでも殉教者だった。
先ほどマンフロイを持ち上げた口で言うのもなんだが、殉職者と言うのは実に厄介である。ましてや自作の「天魔の子・藤堂高虎」でも書いたように、その者が殉じた主義主張が現世利益を否定するような物であったとすると非常にまずい。
ロプト教がミレトスの嘆きだのエッダの大虐殺だのをやって来た宗教である以上、残念ながらマンフロイの道は悪い意味での中世国家の道だった。まあいずれにせよアルヴィスの絶対法治とも言うべき道が消された以上ユグドラルは当分神との共存が続くだろうが、このユリウスのような(自覚なき)傀儡王の存在はもうないだろう。
え?別の意味での傀儡政権はまだ出る?まあ、そうでしょうけどね……。
(その他)
○ゲラルド
序章のラスボスにして、3章のドバールと並ぶ存在感のないボス。
○マクベス
なぜか、専用グラフィックである。
○ヴァハ
魔法を持ちながら間接攻撃に反撃できない、そんなボス前代未聞じゃないだろうか。
○ダナン
ボスチクの餌、第二号。
○ブラムセル
第二部には珍しい俗物悪役。
○ヴァンパ・フェトラ・エリウ
トライアングルアタック!
○オーヴォ
こっそり専用グラフィック、その3(その2はライザ)。
○ムハマド
むしろこの顔は使い回しちゃダメだろ……。
○リデール
聖戦名物七三軍団のラスト一人。
悲哀に満ちたセリフ回しと実力で、ファンの人気を集める存在。
「フッ……これも天命か……」
○フィッシャー
終章の中ボスである。だがこの期に及んで、配下がアクスナイト。他におらんかったんかい?
聖戦の系譜をたどる @wizard-T
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