弐話 祓い屋流

「着いたぞ。ここが3区担当の祓い屋流だ。」


それは、建物の間にひっそりと佇んでいた。


入るぞー、と稲波が戸を開けて堂々と入る。



「お、お邪魔しまーす…」

「シャキッとしな。みんないいヤツだから安心しろ。」


すると、奥から狐のお面をした人が入ってきた。

顔を隠しているため性別は分かりにくい。


「あら、酒天さんじゃないですか。うちに何か?」


その人は中性的な声で問う。


「祓い屋候補を見つけた。お宅の社長は?」

「残念ながら、社長は出張中。」

「あっそ。じゃあお前でいいや。こいつ、頼めるか?」


稲波が隼人の背中を叩く。

おえっと変な声が出た。


「なんでボク?」

「お前新人たちの育成任されただろ。」

「そうですけど〜」


明らかに嫌そうな声に隼人は申し訳なくなる。


「あ、あの、嫌でしたらいいので…」


「ほらほら、泣かれんぞ?この子供泣かしー」

「はいはい、見ればいいんでしょ?」


狐の面の人は隼人の前に来ると屈む。


「君、名前は?」

「境鳥隼人です。」

「おけ、隼人くんだね。ボクは玉藻篝、よろしくね。」


篝はすたこらさっさと奥に向かう。

隼人は急いで追いかける。


「隼人くんは預かりますので〜、酒天さんはもう帰って大丈夫ですよ〜」

「言われなくても報告があるんでね。…じゃ、ゴミむし、頑張れよ!」



稲波に軽くお辞儀をして、再び追いかける。

すると、奥の方にデスクとホワイトボードの並んだいかにも職場らしい場所に来た。



「遅かったわね!…って、あれ?人増えてる?」

「……」



そこには既に同い年くらいの妖が二人いた。

片方は淡い小豆色の髪の少女、もう片方は真っ黒な髪の少年であった。



「ごめんごめん〜!ちょっと酒天さんに呼ばれちゃって!あとこの子も祓い屋候補らしいからよろしく〜」


篝が軽く返す。

そのままホワイトボードの前まで来る。



「君たちは適当に座っといて。……コホン。まずは、ようこそ【祓い屋流】へ!

残念ながら社長は今留守だけど、ボクたちは君たちを歓迎するよ!」

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人の気、物の怪、百鬼夜行 朱秋るい @suakiRui_Aki

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