第11話 未来への手掛かり
俺たちは壁川まことのマンションに居る。時刻はすでに深夜2時だ。
「すまんな、まこと。こんな遅くなってしまって。」
「僕とサトルちゃんの仲じゃないか。こんな面白い話になるとは思っていなかったよ。」
俺はまことに、今までの経緯、ジョン・タイターが残したレバニラ炒めの暗号、それが示すものが、FacebookのLALオーディエンス。
これらが正解が分からないが、このオーディエンスにタイターの残した鍵が隠されているとしたら、それをいち早く見つけた者がタイターの伝えようとした事、あるいは、在多(あるた)いるを未来に戻す手掛かりが掴めるかもしれないと思っていた。
「ま、やるだけの事はやってみるよ。これだけ世界中の膨大なオーディエンスの中でタイターの残した物を探すのはかなり困難ではあると思うけどね。」
「ま、普通はそうなる。だからこそ、まこと。お前の力が必要なんだ。類似オーディエンスは、コンバージョンに達したクライアントに類似した、良質なユーザーをターゲティングにするものだろ?タイターのオーディエンスに何が紐付けされるのか?いや、もしかしたらこのカラクリはもっと難しいものでないといけない。
タイムトラベルに関する機密事項をある特定の人物だけに知ってもらおうという魂胆ならば、タイターはそう安易に見つけやすいオーディエンスを築くだろうか?」
「久しぶりに見たな。いや、もしかしたら初めてかもね?」
俺の熱弁をクールダウンさせるように、まことは口を挟んできた。
「サトルちゃんの中で、いるちゃんは特別な存在なんだねー。」
「ち、ちがうぞ!まこと!俺にとっちゃ幽霊に取り憑かれているんだから、俺としてはこのまま、こいつにいられたらら困るんだよ!」
「本当にいなくなっちゃってもいいのかい?」
まことの見透かした様な目付きに、そんなわけはないだろ!と、俺はソファで横になって寝ている、いるを見つめた。
こいつといたら…食費がやばい。
「とにかく!こいつを何とか未来に戻して成仏させる!」
「分かったよ。サトルちゃん。僕も全力でサポートするさ。しばらくはFacebookもしくはそれに類するSNSにて共通項を探しだし最深部まで潜り込む。」
俺は最後の疑問をまことに託した。
「まこと。もし、お前が木の葉を隠すならどこにする?」
「一般的には森の中ってやつだね?」
「だがネットというのは、ほとんどが森の中と言っていい。本当にそんな中にタイターがメッセージを残していったら、一生誰も探せないだろう。」
「言わんとしてる事は分かるよ?」
「まこと、俺にはここまでの憶測しかできない。だからお前の知識が必要なんだ。よろしく頼む。」
俺はまことに、頭を下げると、まことはいるの方を一瞥してから、俺に目を向けた。
「サトルちゃん。君らの為なら協力は惜しまないさ。」
…君ら?
俺はいるを担いで、まことのマンションからタクシーで自分のアパートへと帰った。
まことは、まことで動いてくれている。俺は俺でやるべき事を見つけなければいけない。
5歳のいるが存在する、札幌の実家。どうにか連休をとって訪れてみたい。
事前にいるの事故を防ぐ事が出来るかもしれないのだから。
幽霊アルタイル ケツカイシ @ketsukaishi
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