第12話 募る想い
ある日の夜、私は幼い頃から大事にしている、くまのぬいぐるみを手にしながら、ぼんやりしていた。
「…あの時の男の子が……劉騎と同一人物ならいいのに……なんて……有り得ない話……だって…性格…違い過ぎるし……」
一方、その頃、劉騎は私達がキスを交わした洋館のセメント壁に腰を降ろし空を眺めていた。
「…郁海…俺にとっても…お前にとっても本当の探している相手なら良いのにな…」
俺は、携帯を取り出し郁海のメモリを出す。
♪♪~♪~
私の携帯の着信が鳴る。
「…劉騎…?」
ピッ
電話に出る。
「もしもし」
「郁海?俺だけど分かるか?」
「うん分かるよ。どうしたの?珍しい」
「今、何してた?」
「ぼんやりしていた」
「そっか…」
「うん。劉騎は?」
「俺…?俺は…今、外出中」
「えっ?一人で?あっ!彼女かな?でも連絡していたら彼女から怒られちゃうか」
「一人だよ…彼女はいねーし。…なあ…郁海…お前の会いたい奴」
「うん」
「見つかると良いな」
「えっ?…劉騎…?」
「じゃあな」
「待っ…」
電話は切れた。
「…劉騎…?」
私は、くまのぬいぐるみを手に取り部屋を飛び出す。
階段をかけおりる。
「郁海ーーっ!もっと静かにしなさいっ!」
「ゴメンっ!ちょっと出かけて来る!」
「えっ?あっ!こらっ!郁海っ!」
私は家を飛び出すと、迷う事なく屋敷の場所に足が向かった。
近くまで辿り着いたものの離れた視線の先には、1つの影。
誰かは確認取れない。
ドキン
「…劉…騎…?」
そう思ったのは劉騎であって欲しいという私の心の願いだったのだろう?
人影は地面(した)に飛び降りる。
「待って…帰らないで…」
私は走って、その場に向かう。
すると人影は帰る所か、あの鉄柵を飛び越え屋敷の敷地内の方へと飛び込んだ。
「…劉…騎…?」
「えっ?郁海?何して…」
スッと、くまのぬいぐるみの顔の方を向け劉騎に差し出した。
「…くまの…ぬいぐるみ…それが…どうかした?のか?」
鉄柵の隙間から、くまのぬいぐるみを受け取り交互に見る。
「…私が…幼い頃に…ここ(屋敷)に落とした…ぬいぐるみ…」
「あー…お前が言っていた、くまのぬいぐるみな。で?それがどうしたんだ?」
「…やっぱり…違うんだね…」
「えっ?違う?」
「劉騎が……あの時の男の子だったらなんて……思っていたから……ゴメン…違ったみたい…それじゃ……」
私は帰り始める。
「おいっ!ちょっと郁海っ!待てよっ!」
ガシャン
鉄柵を飛び越えて来る劉騎。
「郁海っ!ぬいぐるみ気に入ってんだろ!?一人にしたら、くまが泣くぞ!」
ドキン
振り返る私。
「ほら」
「…そうだね…」
私はくまのぬいぐるみを受け取ろうと手を伸ばすと劉騎はグイッと引き寄せと抱きしめた。
ドキン……
「もう離したら駄目だからな」
ドキン
「えっ…?」
「俺も…お前を……離さない…」
ドキン
「劉騎……」
「お前が探している奴……会いたい奴は……俺だから……それから……俺の気になる奴……お前だから……」
「……本当に…」
「ああ……くまのぬいぐるみ見て確信した」
抱きしめた体を離す劉騎。
「性格とか変わってるかもしれないけど……正真正銘……くまのぬいぐるみ拾ったのこの俺だから」
「良かった……私……劉騎が……」
言い終える前に唇を塞ぐ。
「俺と付き合おう…郁海…俺…お前が好きだ!」
ドキッ
「…私も……劉騎が……好き……」
私達は再びキスをする。
キスをしながら、セメント壁に押し付ける。
「郁海…このまま連れて帰りたいけど……そういう訳にはいかないんだよな……」
「駄目だよ。私、家、飛び出して来たんだから」
「飛び出してきたって……お前なぁー……取り合えず送る」
「大丈夫だよ」
「駄目だ!お前、夜道は危険なんだからな」
私達は恋人繋ぎをし劉騎は家迄送る。
「帰ったら連絡するから」
「うん、分かった」
私達はキスをし別れた。
私達はこれからも
ずっと
一緒だよね……劉騎♪
幼き頃の男の子に会いたくて ハル @haru4649
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