個性を活かした人のはねかた

にぽっくめいきんぐ

2021年1月2日

転生(メイン) :8人

転生(アシスト):3人

特記事項    :Ref.:S503921の少年に後遺症アリ。


明後日にはもう仕事明けだが、この転生数ではまた圧をかけられる。

いっそのこと、自分で自分をいて、異世界転生できたらラクなのかもしれない。


女神部に転籍した川野さんからのメールによると、S503921の芹沢君は、下半身に重い障害が残っているらしい。


>芹沢さんにつきましては、

>現地スタッフに追跡フォローを既に

>お願いしています。

>転生時獲得スキルにつきましても、

>歩行を前提としないチートスキルを

>付与致しました。

>具体的なスキル内容は、守秘義務のため

>お伝えできませんが、

>アフター・クォリティ・オブ・ライフ

>A-QOLの試算上も、平均値を10%ほど

>上回る形に配慮させて頂きましたので、

>どうかご心配なさらぬよう、

>お願い致します。


さすが才女の川野さん。

気が利く対応で、ありがたい反面、自分が情けなくなる。


報告書にはなんと書こうか。


『だから前々から、転生トラックのフロント部分は上向きに傾斜させた方が良いと提案してましたよね? きつぶすのではなく跳ね上げた方がボディが損傷せず、A-QOLが上がるだろう、とお伝えしたはずです』


だめだな。

素直に書いても、また、リーダーに握りつぶされるだけだ。

うちのリーダーは、転生人数の実績以外は、どうでも良いって人だからな。


マシーンのように1人でも多く人を跳ね、異世界転生させる。そして神界から、より多くの収入を得る。


結局うちの部署は、そういう考え方しかしていないのだから。


個性を殺して、人を殺す。

いや、人を転生させる、と表現しなければいけないんだった。

管理職としてはそれでいいんだろうけど、

実際に手を下す俺にとっては、殺すという言葉の方がしっくりくる。


芹沢君たちがその後、どの世界でどう暮らしていくのか?

そんな情報は、会社から俺には、一切おりてこないのだから。


この先、俺はどうすればいいだろう。

もっと沢山人をひいて昇進し、自由を手にするしかないのだろうか。


何をどうカイゼンすれば、誰がどう幸せになるんだろうか。

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