私は出流(いずる) 権三郎(おねぇ)の幼なじみ

みなはら

第1話 私は出流(いずる) 権三郎(おねぇ)の幼なじみ



 私は出流いずるです。

稀人まれびとギルドの小さな支部を最近任された、地球、現代人の転生者です。

転生前は日本の地方都市で会社勤めをしていました。



 ここ、稀人ギルドは、転生者やこの世界へと来てしまった人たちから、

ただ『ギルド』とだけ呼ばれることの多い、冒険者ギルドのひとつなんです。

 ここでは、冒険者への仕事の依頼や斡旋あっせんのほかに、

私のような稀人、転生であったり、召喚や、神隠しのようにこの世界へ迷い込んだ人たちを、保護したり、手助けをしたりしているんです。


 稀人ギルドは、この世界で困っている稀人たちを助ける、お互いに助けあうための『互助会』のような活動をしている組織です。

 冒険者ギルドを兼ねているのは、ギルドの創設者が、やはり稀人であり、この世界の一般的な生活に馴染めず、冒険者として生きていたことに端を発しているようですね。


 創設者が冒険者ギルドだけでなく、稀人互助会の設立を考えたのは、冒険で出会ったモンスターに、同郷の転生者が居たことが大きかったようです。

 ですから、この稀人ギルドへ所属するメンバーには、他の冒険者ギルドに所属する亜人デミヒューマンの方たち以外にも、

転生前の出自が、人間や異世界人などの、前世が元人間のモンスターたちが所属メンバーとして登録されているのは有名な話です。



 現在のギルドの実質的な代表者は、創立者の友人であり、現在も存命している創設時からのメンバーで、ギルドの幹部でもあるドラゴンさんです。私はまだお会いしたことはないのですが…。



 ◇


 何故私がみんな知ってるようなことを、早口で説明するように頭で復唱しているのかというと、

実は私、とても焦っているのです。


 今、手元に届いた冒険者の情報の中に、前世の友人の情報を見つけたんです。

先ほどこのギルドに来た冒険者たちですが、ほとんどが稀人だという、珍しいグループだったのでした。

 その中に、転生した私の幼なじみが居たのです!

提示されたデータで、それがわかってしまったのです!




 権田権三郎くん。

ごんちゃんは前世の私の初恋の人だったのです…。


私は彼のことがとても好きだった。


告白はしてないんです。片思いのままでした。


 卒業後、彼は私や友人たちから離れて音信不通となり、

そして突然再会したときに、おねぇになって居た衝撃っ!!!!


衝撃を受けた…。


それから前世の私とごんちゃんは、女友達になったんだよね…。


 ◇


 私はそれから転生して、

今、彼と再会した…。



 だから、転生した今ならっ!


 二人がまた会えた今ならっ、

きっと私は告白できる!



 そしてっ、そして今度こそっ!

今度こそ、私の恋を成就させたいっ!



と、データを見ていて私は気づいた…。


「フィーアぁ…?

 エルフの、女性ぃ~っ!?」



 私は思わず席から立ち上がり、

受付にいる冒険者たちを見たのでした。


 そして、仲間の男性へ僅かに身を寄せている、小柄なエルフの女性をまじまじと凝視したのです。



 ごんちゃんっ!!、エルフの女の子になってる!?

それにっ、彼氏いるの~!?


細身の戦士で中東風の、髭の男っ。ごんちゃんのモロタイプな人じゃない!



 私は脱力して、椅子へと腰を落として、机へと倒れ込む。



 机に突っ伏したまま顔を傾け、横目でごんちゃんと、その仲間たちをぼんやりと眺める。


 また告白できないのね。

私の人生って何なんだ…。



 でも、まあいいか。


ごんちゃん、楽しそうだし…。



 前世のごんちゃんは、カミングアウトして、さっぱりした顔はしてたけど、

でも、寂しそうだったもの。



 ごんちゃんが幸せなら、私も幸せだしね…。


前世で好きだった人と、また再会できたことを喜ぼうっ!



 私は頭を切り替えて、

ごんちゃんへと声をかけてみる。


「ごんちゃんっ!ごんちゃんよね?

 わたしよっ。幼なじみの、お隣のいずるっ!」






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私は出流(いずる) 権三郎(おねぇ)の幼なじみ みなはら @minahara

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