産地直送ニコニコレストラン
砂漠の使徒
ステーキ
「腹が減った……」
俺は会社の昼休みをつぶしながら、ちょうどいいレストランを探していた。
この辺の飯屋は大体行ったことがある。
決してまずくはないが、たまには違うところに行きたい。
「ん?」
路地裏をちょっと進んだ先に何かがある。
四角い看板にポップな字で「ニコニコレストラン」、その上には大きな赤い字で「産地直送」と書いてある。
そして、看板の下の方には満面の笑みをたたえている子供のイラストが描かれている。
その看板になぜか惹かれて俺は店に入った。
「いらっしゃいませー!」
店員は一人しかいない。
店もさほど広くないし、それで十分なのだろう。
「こちらがメニューです」
俺は差し出されたメニューを見た。
大体の料理は普通のファミレスにありそうなものばかりだった。
しかし、せっかくならこの店でしか食べられないようなものが食べたい。
そう思い、「当店限定ステーキ定食」というのを頼むことにした。
横にあるイラストは店の看板にも描かれていた子供が「おいしいよ」と言っていた。
「すみませーん。ステーキ定食ください」
「おっ、お客さんお目が高いですね。うちのステーキは産地直送でおいしいんですよ」
「へー、そうなんですか」
産地直送か。どこからだろう。外国産じゃないよな?
わずかな不安を抱きながら、国産肉が出てくることを願った。
しばらく待っていると料理が運ばれてきた。
鉄板の上にはジュージューと音を立てているおいしそうなステーキが……。
よだれが出てきた。
けど、よく見ると見慣れない色や形の肉だな。
てっきりステーキだから牛肉だと思っていたが。
まあ、牛肉じゃないステーキもあるのだろう。メニューにも牛だとは書いていなかったし。
そんなことよりもおなかが減っていて、早く食べたかった。
「いただきます」
俺は一口目を口に入れた。
食べたことのない食感や味だが案外いける。
「おいしいなあ」
ご飯ともよく合う。
「おほめいただきありがとうございます」
暇なのか、店員が話しかけてきた。
「この肉、何の肉なんですか?」
「何の肉って……。お客さん、知らないで頼んだんですか?」
メニューに書かれていないのだから知らないに決まっているじゃないか。
「はい」
「そうですか……」
その後店員は一言もしゃべらなかった。
「ありがとうございましたー!」
俺は食事を済ませ、店を出ようとした。
しかし、やはりあのことが気になって店員に尋ねた。
「あの、ステーキの肉って……」
「看板をよくご覧になってください」
そう言って、店員は僕を店の外に追い出した。
産地直送ニコニコレストラン 砂漠の使徒 @461kuma
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