第12話
東京都内のアパートの一室。
大量の現金に囲まれた男がミイラ化した状態で発見された。
発見したのは国税局の職員と刑事である。
「約一年前。日本中に広まった新型肺炎で解雇された男がこいつです」
「にしては沢山の現金だな」
「家賃もきちっと払っていたようです」
「収入はないはずだろ?」
「携帯の通話記録。又は周囲の人間には『コンビニで働いている』と話していたそうです」
「その割には稼ぎ過ぎだろう」
「貴金属買取り専門店に出入りして宝飾品を売却してるとの通報がありました」
「で、こいつが免許証のコピーと防犯カメラの映像写真か。本人で間違いなさそうだが」
「おそらく密輸された金貨を日本円に両替するアルバイトをしていたものと」
「出し子か。日本人じゃなきゃできない『コンビニバイト』だな」
「一ヶ月ほど前。例の新型肺炎の検査を受けていたそうです。結果は陽性。ですが病院は医療崩壊状態。ベッドの空きなんてありません。彼は二十代と年齢も若いですし自宅待機を保健所から要請されて」
「容態が急変。大金に囲まれたまま自室で病死。か」
刑事は手掛かりはないかと携帯を調べた。キャバクラで遊ぶ男の写真が写っていた。
「今までの人生で手にした事のない大金の使い方がわからなかったんでしょうなあ」
「GOTOキャバクラで濃厚接触か」
「偉い政治家の皆さんの要請に従っただけですよ彼は」
「だな。おい。現場検証が済んだら哀れな若者を丁寧に運んでやってくれ。あと、作業が終わったら手洗いうがいを忘れるなよ」
科捜研の人員に指示を出しながら刑事は思った。
コンビニで働くか。密輸した金塊を日本円に変えるアルバイトの隠語としてはよくできてるじゃないか。コンビニはATMもあるしな。
「もしかしたらコンビニかどこかで会ったか。それとも携帯のチャットアプリか。いずれにしても現金が残っている以上こいつから後ろにいる連中を追いかけるのは難しいだろうな」
刑事はそう思いながらアパートを後にした。
大繁盛異世界コンビニ 虹色水晶 @simurugu
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