訪問者

奈良ひかる

第1話





 トントントン

 

 

 ドアがノックされる音がして俺は極力音が出ないように玄関に向かうと

 覗き穴から外を確認するが誰が来たのかが見えずらい。

 どうして見える位置に立たないのか? バカなのかな? 

 

 

「宅配便です」


 

 その声を聞いてようやくドアを開けた。

 サインをして荷物を受け取るとドアを閉める。

 

 

 居留守だ何だと文句を言う前に、見えやすい場所に立つなり、身分を言うなり

 して欲しいものだ。

 

 

 宅配物はエビだった

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 トントントン

 

 

 また誰かが来た。

 毎回この瞬間はびっくりするから、心臓に悪い。

 音が出ないように玄関に向かい覗き穴から外を確認すると小さめの荷物を持って

 立っていた。

 

 

 また宅配便かと思って開けてみると

 


「すいません。新聞は取ってますか? 」



 騙された、糞セールスマンだった。

 

 

「いりません」



「今ならお安く…… 」



 何か話して来ようとも関係なくドアを閉める。

 話せば対応してもらえると思うなよ! 人の善意に付け込む糞どもが。

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 トントントン

 

 

 覗き穴を覗けば女の人が立っていた。

 近所の人かと思って出てみたが

 

 

「アナタ ハ イマ シアワセ デスカ ? 」



 宗教の勧誘だったので

 

 

「必要ねえよ」


 

 ドア閉める。

 偉そうに、他人の幸せ祈ってんじゃねえよ!

 自分の幸せだけ祈っとけ!

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 

 

 

 トントントン

 

 

 覗き穴から覗けばお兄さんが一人立っていた。

 

 

「ガスの点検です」



 俺はドアを開けた。

 

 

「失礼します」



 とづかづか入ってくるそいつは何故かブレーカー周りを見だした。

 そして何か紙にチェックをしだし、終わったかと思えば

 

 

「それじゃあ、料金の方を」



 なんて言い出したのでこいつに決めた。

 

 

「おいくらですか? 」



 俺は移動して詐欺師の後ろに回るとスタンガンを当ててやると面白いくらいに

 ピクピクしていた。

 

 

「前世はエビかな、殻でもむくか」



 俺はさっそく準備をしてから風呂場へエビを持って行くと、殻むきを始めた。

 なかなかに硬いエビで一苦労である。

 こっちもプロではないので、そう簡単にはいかないが経験はあるのでそこそこうまく

 むけたのではないだろうか?

 

 

 

 ◆◆◆◆◆

 


 

 トントントン

 

 

 覗き穴を覗けばそこには警察官らしき格好をした人が立っていた。

 俺はチェーンをかけてからドアを開ける

 

 

「すいませんね、警察ですけど。少しお話いいですか? 」



 自分が着ている服だけで警察官だと名乗るそいつの相手をしてやる事にした。

 

 

「先日、人が訪ねて来ませんでしたか? 」



「はあ? 」



 一体誰の事を言っているのか分からないので相槌を打つ。

 

 

「こういう人なんですけど、知りませんか? 」



 写真を見ても記憶にない。

 

 

「知らないですね。もういいですか、やる事あるんで」



 閉めようとすると

 

 

「ちょっと待ってください、この人が言うんですよ。ここに入ったきり戻って来ない

 って。中、見させてもらってもいいですか? 」

 

 

 知らないおじさんが横に隠れるように立っていた。

 

 

「嫌です」



 俺はドアを閉めた。

 身分も証明しないコスプレ野郎とおじさんという気持ち悪いコンビ。

 どれだけ仲良しなんだと思う。

 

 

「嗚呼、気持ち悪い。ロクな奴が来やしないなここは」



 俺はミキサーを回す作業に戻った。

 

 

 

 

 

 

 




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訪問者 奈良ひかる @nrhkr278

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