Disc.03 - tr.5『小さなヘッドホンとコンピレーションとUL』
何はともあれ、無事選曲は完了。
次は録音と言うことになるが――。
「こ、こんな雑多な音源、どうしますの!?」
「確かに。CDはまだ良いとして、アナログ盤やカセットまであるぞ」
「ちょっと大変そうね~~」
焦り気味のソニアと真紅を余所に、ちっとも大変ではなさげに宣う日々希。
「まぁまぁ、昔ならホンットに大変だったんでしょうが――」
ニヤリと悪い顔で口角を上げる響一郎。
「現代には文明の利器って奴がありますからね♪」
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「先ずはチームを分けましょう」
そう宣告して一同の前に立つ響一郎。
「チームって、どうするの?」
「ざっくり3等分、A班とC班とD班だな」
「Bは無いの?」
「A=アナログ(ディスク)班、C=カセット(テープ)班、D=デジタル(ディスク)班、ってことでひとつ」
「要はレコードとカセットとCD、と言うことか?」
「そうっスね。粗方はCDに収録されてるんスけど、未収録のレコード音源と、音盤化すらされてない曲をカセットに録った分と」
「ネットでは拾わないのか、キョン²?」
「古いCM音源なんかはPCやVTRからカセットに落としてある。ネット動画の
「えー!! ダウソダウソー!!」
「やめんかw 仮に動画があってもフリーの音声抽出ツールとかググればゴロゴロあるから、それ以降の扱いはCD音源と変わらん」
「そいで、別れて何するのさ?」
「先ずは音源を統合するんだよ」
「「「「「「統合?」」」」」」
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「それではA班、参りますわっ!!」
「いやいやそんなに気張らんでもソニア」
「大体
「んじゃボクは見てるから先ずはひとりでやってみ?」
「ぐぬぬ……」
A班ことアナログディスク=レコード班。
一応は経験者のヴィーと初心者ソニアのペアである。
「でさ、よりにもよって何だってあの二人にしたのさ?」
「面白いからw」
「なる☆ さっそく部長のぐぬぬ頂きましたー☆ ……で、ホントのところは?」
「大体がアレに遠慮無く物申せるのが他に居ねぇだろうがよw」
「成る程ねー☆ 良く解ってんじゃん☆」
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「それではC班~~!! えぃえぃお~~!!」
「お、おー!!」
「それで、何するんだっけ~~?」
「い!? え、えーとですね、このカセットの音をこっちのPCに――」
C班ことカセットテープ班。
いずれも初心者の真貴と日々希のペア。
「こっちはこっちで不安だらけなんだけど(^^;」
「まぁやることはA班とそう違わねぇしな。そこらは後で纏めて説明するさ」
「うーん……(^^;」
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「さて、それでは我々D班も進めるとするか」
「あいよっ☆」
「で、CDをPCに吸い上げるだけ、なのか?」
「うーん、そうみたい☆」
D班ことデジタルディスク=CD班。
こちらも初心者の三沙織と真紅のペア
「なんというか、あまりにも簡単すぎて、アレなのだが(´・ω・`)」
「ははは……ねぇ……」
何かを言いたげに響一郎を見る三沙織。
彼女と目が合った響一郎はニヤリと悪い顔になる。
「D班には吸い上げた後でやって貰うことがあるんですなこれが♪」
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響一郎がパンパンと手を鳴らして言う。
「ほんじゃA班とC班、音出しが終わったら、A班はプレイヤーに繋がってるフォノイコ、C班はカセットデッキの裏にある
「えーと……・繋がりましたわよ」
「こっちも繋がったわよ~~」
「んじゃ次、PCの波形編集ソフトを起ち上げる。そう、ど真ん中にあるそのアイコン」
「なんかバーグラフみたいのが出たぞ」
「なんか微妙にチリチリ波打ってるけど……」
「そのチリチリはケーブルに乗ってくる微細なノイズとかPC自体から出てるノイズだから気にすんな」
「で、これをどうしますの?」
「録音のアイコンを押したらバーが走りますね? で、ここでレコードは針を落とす、カセットは
「わ!! なんかグラフが波打ちだしたよ!?」
「それがプレイヤーやデッキからの音だ。で、ここで注意するのが、録音レベル」
「録音レベル?」
「あぁ。なんせ音源がてんでバラバラだからな。一曲一曲、レベルオーバーしないように調整せにゃならん」
「えーっと~~このバーを上げ下げすれば良いのかしら~~?」
「それで正解っス。で、右端のメーターが赤にならないように微調整して下さい」
「ちなみに赤になるとどうなる、キョン²?」
「音が割れて聴くに堪えない事になるが……なんなら試してみ?」
止めようとするソニアを無視してヴィーがぐいっとバーを目一杯持ち上げたから堪らない。
「「くぁwせdrftgyふじこlp!!」」
哀れ、至近距離で聴いていたソニアとヴィーは耳を押さえて頭を抱える羽目になったw
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「カセットはすぐ止められるからやりやすいわね~~」
「そうですねー」
あれからたちまち操作を感得した感覚派の日々希とカセット操作担当の真貴。
一方、ソニアとヴィーは……。
「違いますわっ!! もう少し前ですわっ!!」
「もう少しとか指示がざっくりし過ぎなんだよもぉ」
流石に放っておく訳にもいかなかったか、響一郎が手を叩いて注意を促す。
「ちょいと完璧主義のソニア部長殿?」
「はァ!?」
「一応言っときますが、これPCですぜ?」
「そんなことは言われなくとも――」
「解ってねーだろ?」
「んなっ!?」
怒り心頭のソニアに臆するでも無くしゃあしゃあと続ける響一郎。
「
「あ、そうか!!」
ぽんと手を打つヴィー。
「だから最初で録音レベルさえ決めとけば、あとはざっくり録音して、要らない所は編集で切り落とせばいーんスよ♪」
「――だってさ、ソニア( *¯ ꒳¯*)」
「――わ、
まだまだ素直になれないお年頃のソニアさんであったw
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「――で、録音終わって、不要部分のカットも完了したら」
響一郎の説明が続く。
「名前を付けて保存して下さい。ファイル形式はこれ、品質は――今回のは音源が音源だから48kHz/24bitもありゃいいか。あと、名前の付け方は統一しましょう。曲名の後に歌手名を括弧書きで」
暫し、録音→編集→保存の繰り返しが続く。
その頃にはD班の作業は完了していた。
「で、雨音? 我々は今のところ手空き状態になるが」
「さてと、んじゃま、次の段階に参りましょうかね」
「次?」
「今取り込んだデータを他のPC2台分、USBメモリにコピーして下さい。クラウドとかファイルサーバでも使えりゃ良いんですが、この部室にゃンなもん繋がってないみてーだし」
「それもすぐに片付きそうだな」
「ええ。で、D班は先にプレイリストを作っときましょう」
「ああ、それで"統合"なのか」
「副部長、どゆこと?」
「お前たちもスマホでやっておろうが。アレをこのPCでやるだけだ」
「A班とC班が今やってるのは、アナログ音源を全てデジタル化して、PCで一括して扱えるようにしてんだよ」
「あ☆ なる☆」
「と、いうことは――」
「ご明察。あっちのもこっちへコピーします。こっちからのをあっちへ移動したらそのままあっちのをUSBメモリにコピーすりゃいい」
「承知した。向こうもぼちぼち終わりそうだな」
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そしてコピーを繰り返し、部室にあった3台のPCに同じ音源が揃った。
「あとは簡単な話ですな」
響一郎先生の説明は続く。
「今度はプレイヤーソフトを起ち上げて――そう、その
「そ、そんな大雑把なことで宜しいんですの!?」
「宜しいんですのw」
ニヤリと嗤って続ける響一郎。
「後は各班、要らない曲はどんどん消して――あぁ、元データは消えないんで大丈夫――必要な曲だけになったら並べ替えるだけってね♪」
「うふふ~~面白いわねこれ~~」
「日々希パイセンは楽しそうに消してくなぁ(^^;」
「えーっと、これは大丈夫ですわね、こっちは――」
「意外と慎重派なソニアであったw」
「ヴィー、意外というのはどういう意味かしら……?」
「おぉ!! 出た、悪役令嬢!!」
「響一郎、貴方まで……二人とも、ちょっとそこに直り遊ばせっ!!」
「相変わらず懲りるということを知らん奴らだ┐(´д`)┌」
「あ……あはは……はは……」
[L] ||||||||||||||||||||||||||
-dB 40 30 20 10 5 0 2 4 6 8 +dB
[R] |||||||||||||||||||||||
'80~'90年代、ウチのカセットデッキからはオーディオセレクタが伸びており、そこにレコード・チューナー・CD・LD・VTR・もう一台のカセットデッキ等が繋がっておりました。DVDはまだ無いか発売されたかどうかと言う頃です。
これらを切り替えて録音してるとですね、もー段々と訳わかんなくなってくるのですよ……。
今はPCで一括管理できるのでこういったややこしいコンピレーションを編集するのは楽になりましたねー。無論、そのための前準備も必須ではありますが。
現在、録音にはAudacity、再生にはfoobar2000を愛用しております。対応ファイル形式が多いのが便利。複雑な機能が不要でファイル形式もmp3とWAVだけあれば良いという向きには録音にはSound Engine Free、再生にはWindowsに付いてくるWindows Media Playerでも問題は無いかと思います。私もWindows XP時代はその組み合わせでした。
きゃりぶれ! -鹿苑木高校電音部- ひとえあきら @HitoeAkira
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