5.幕間 翻弄される人々

 満怒羅剛羅マンドラゴラ愚連隊ぐれんたいの奴隷たちは、ちょうど小高い丘の上で、圃場ほじょうから立ち上る巨大な黒煙を見守っていた。――あの恐ろしい鍬男が現れてからというもの、あまりにも急速に物事が進んでいる。彼らは、自分の身に何が起こっているのか理解することもできなかった。


 だが――確実に何かが変ろうとしている。

 そんな予感だけが、彼らの胸に同じく去来きょらいしていた。


 そして子供を身ごもっている女性は、遠ざかる意識を必死に保ちながら、変わり果てた圃場を網膜に焼き付けていた。

 彼女の胸にあるのは、喜びでもなく、苦痛でもなく、己の無力でもなかった。

 ただ、このマンドラゴラに狂わされた世界に生れ落ちんとする、我が子に対する激励であった。


(生きて……この世界で強く……強く……)


 震えながら、泥まみれの掌を重ね合わせ。何度も、何度もそう祈った。

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