第180話 田舎者弓使い、寝込む
リュートは兎に角学園での生活が楽しみだったので、早急に入学出来るようにお願いをした。
――のだが。
何と、リュートは生まれて初めて、知恵熱でダウンしてしまったのである。
しかし何故彼が知恵熱で寝込んでしまったのか。
その理由は、自身の世界と文明の発達度合いが明らかに違い過ぎ、あまりのギャップを受け止め切れずに脳が熱暴走してしまったのだ。
それもそうだろう。
ショウマの家にお邪魔してから、いつでも水が出せる水道もある、トイレなんて自動的に水が流れるし風呂だって暖かい。
ベッドなんて自身の世界と比べ物にならない程ふかふかだし、街並みだって比べ物にならない程発展しているし非常に平和である。
更にはショウマがパソコンという物の存在を教えてくれたのだが、世界中の人とそれ一つで通信が出来てしまうのだ。
極めつけはテレビだ。
何時でも世界情勢などの情報を流してくれるニュースや天気予報など、それらを無料で教えてくれる機能があるのだ。
受け止め切れる訳がない。
現在熱は四十度。
もうインフルエンザレベルの熱である。
(……体温を測る魔道具――じゃねぇんだっけか。そんなのもあるとか、何なんだべ、この世界)
今リュートはショウマ宅で空いていた一室――と言っても急だった為布団しかない部屋だが――で寝ていた。
おでこに冷たいタオルを乗せていて、それが非常に気持ちよかった。
(嗚呼、本当は明日にでも入学出来た筈なんだけんど、情けねぇ……)
リュートは物心ついた時から熱で寝込むのは、今回を含めて二回だけしかない為か、気持ちが弱っており心の中で弱音を吐いてしまう。
だが――
(前熱出した時ぁ、村の女どもが集まって来て騒ぎ立てまくったけぇ、全然休まらずに悪化しただぁ……。こんなにゆっくり休めるのはありがてぇ)
リュートの世話をしたい一心で、村中の女がリュートの家に流れ込んできたのである。
しかも私が私が、と色々と主張しまくった結果、休まらずに悪化し、生死を彷徨う程酷くなったのである。
当然村長は激怒し、村全員の女どもをリュート宅に入るをの禁止されたのだった。
イケメン度合いもここまでくれば厄災そのものである。
兎に角、なるべく早めに学園に行きたいので、リュートは大人しく目を閉じて休む事に専念する。
すぐに落ち着いて休める環境を作ってくれたショウマ達家族には、感謝しかない。
ただ一つ気になる点がある。
ショウマの妹である絵美が、やたらリュートをちらちらと見てはすぐに目をそらすのである。
その点だけが非常に気になっていた。
(……オラに何か言いたい事、あるんだべか?)
不正解だ。
ただただ格好良くて一目惚れしたリュートを直視したいけど、直視するとあまりのイケメン度合いに気絶してしまいそうになるので、ちらちらと見るしかないのである。
それにリュートが女性恐怖症気味である情報も聞いているので、彼に嫌われたくない絵美としては積極的に迫らずに、一歩引いているのだ。
そんな絵美の心境をリュートが知る事は無く、有難いと思いながら深い眠りについたのだった。
「いやぁ、まさかあのリュートが熱でダウンするとはなぁ」
リュートが眠りについた時、ショウマ達一家はリビングにいた。
ショウマが異世界転移する前の家と内装は全く変わりないが、細かい所は魔石を使用した家電になっているので、家族には軽くその部分だけ説明を受けたのだった。
「リュートさん、大丈夫かなぁ……」
絵美がリュートを本気で心配していた。
露骨に恋をしている表情を見せていたので、ショウマ含めて家族全員が彼女の恋を把握していたのだった。
「まぁリュートならすぐに回復するだろうさ。……絵美が迫らなきゃな」
「せ、迫らないよ!!!!!!」
「声デッカ」
ショウマが妹をからかって妹がむきになって返すという、ショウマがいなくなる前では当たり前だった光景が眼前で行われている。
その事があまりにも嬉しくて、ショウマの母である春香はついつい涙してしまう。
父である良助も同様で、着けていた眼鏡を外しては涙を指で拭っていた。
「……さて翔真、向こうの世界でどうやって暮らしていたか、教えてくれないか?」
良助がショウマに問う。
「ああ。でも結構色々あったから、話は長くなると思うぜ?」
「いいさ、いくらでも付き合うよ」
「お兄ちゃん、リュートさんの事も教えて!」
「はいはい、わかったよ。それじゃぁ、何処から話そうか……」
ショウマは、彼等の約二年半以上に渡る異世界冒険物語を、家族に伝え始めた。
あまりにも濃厚で、あまりにも死と隣り合わせの世界のハラハラドキドキの冒険譚で、気付いた時には家族全員が夢中になっており、時間は夜の十時になっていた。
しかもリュートが起きてきて「何か食べるものはないか?」と尋ねるまで、ほぼノンストップ状態であった。
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田舎者弓使い、聖弓を狙う ふぁいぶ @faibu_gamer
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