愛されたい欲求と怠惰さ

人間の性格には様々な側面があってその比重は各々異なるし、相対する人によってもその露出の仕方は変わるし、相手からの見え方も変わるものである。
しかし人間らしさと言うのは人間の悪性に出ることが多いようで、それゆえにどこまで行っても一本調子に良い側面しか見せない人間はどこか嘘くさく人間らしさのないものである。
他人から愛されたい、認められたいというナルシズムな欲求やだらしなさや怠惰さと言うのは、その多寡はあれど誰しもが持ち合わせているものであり、それを認めたうえでそれを律するのが人間の美徳であり、初めから持ち合わせていないのは美徳というよりは不自然な現象とも言える。
本作は主人公と相手双方がそう言った人間らしさを持って打算的に付き合っている様子がうまく描かれいる。
斜陽と言う題名からなんとなくそのモデルも類推させるのも面白い部分である。

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