【終】サキュバス、入ってます。

 三年。

 三年が過ぎた。

 悪夢のようなサキュバス襲来から三年。長い長い時が過ぎたのだ。

 その間にイエスタデイをうたってがアニメ化されデジモンアドベンチャーがリメイクしウマ娘がリリースとなりサクラ革命がサ終してしまって進撃の巨人が最終回を迎えベルセルクとハンターハンターの連載が再開した。沢山のでき事があった。そう、沢山の……





 激動の三年。数々の変化が世で起こる中で俺の生活は──





「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! ナイスナイス! 日本の宝かそのスパショォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!」






 ──まったく何の変化もないのだった。





「ムー子お姉さんうるさい」


「シシシ! ごめんごめん! でもマリちゃんもようやくこうやって一緒にスプラできるようになったねぇ! 前まではボロボロに負け要因になったせいで半泣きで“もうやんない!”なんて言ってたのにぃ!」


「はぁ? 言ってませんが? 妄想癖乙」


「ムッホホ! まぁそういう事にしておきましょう」


「……ゴス美お姉ちゃーん! ムー子お姉さんがウザーい!」


「あ! ちょっとマリちゃん!」


「ムー子。後で懲罰」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」





 うっるさい。

 なに? この、なに? 今日日曜なんだけど。なんで朝からお前らそんなにうるさくできるの? 意味分からないんだけど。もうおかげで昼まで寝る計画がパァ。ご破算。昨日深酒したからこんなに早く起きたって頭回らないし身体怠いしで無為に過ごすしかないんだけども。え? どうすんの俺? この早起きした時間。




「ただいまー。ニクソンの散歩終わりましたぁ」


「Je suis de retour 戻りました」


「お帰りなさい。プランにピチウちゃん。ご飯できてますからね」


「ありがとうございます。ゴス美さん」


「Je vous remercie」



「そうそうゴス美さん。駅前の空きテナントにもう新しいお店が入ってましたよ~。明日オープンらしいです。一緒に行きましょうよ」


「そうですね。そうしましょうか」



 相も変わらずプランは居候してるしマリも普通に都会の生活エンジョイしてるし。楽しそうだなおい。俺はちっとも楽しくないぞ。





「あ! ご飯ですか! 食べます食べます! 私も食べますよ! このムー子ちゃんもゴショーバンに預からせていただきます!」


「お前の分はない」


「え? ちょ、え? どういう!? どういう了見ですかゴス美課長!?」


「聞きたいか?」


「えぇ! そりゃあもう! 私には聞く権利があります! 泣き寝入りなんてしないんですからね!」


「そうか。なら言ってやろう。お前に食事がない理由。それは昨日ニクソンの餌やりを忘れあまつさえそれを隠蔽しようとドッグフードをトイレに流し詰まらせたからだこのクソボケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」


「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ! す、すみませぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!」


「分かったらさっさとピカ太さん起こしてこいやテメェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ! なにいつまでもすっとぼけてゲームやってんだ殺すぞボケェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェ!」


「い、いきますぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ! いかせていただきますぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……」




 ドタバタドタバタ。



 コンコンコン!




「ピカ太さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん! お食事の時間ですよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?」


「……」


「聞こえてますかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? 寝てますかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? どっちでもいいんですけどぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ出てきてくださぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」


「……」


「無視ですかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!? とりま部屋入りますねぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? よいしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぼべぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」





 入室のタイミングを見計らっての対面フロント・スープレックス! 脳天直撃だぁ!




「ちょ! ひど! 酷くないですかいきなり!? 私まだ何も悪い事してないですよ!?」


「朝からうるさいんだよ。お前のせいでこんな時間に目覚めたんだぞ。ふざけるなよ? 俺の休日返せよ」


「え~? 共同生活ですよ~? 程度の生活音は我慢していただかないと」


「程度の域超えてるんだわ。完全に騒音被害なんだわ。訴えるぞてめぇ」


「そんな事言われましてもねぇ……あ、そうだ。一つだけいい方法がありますよ? 聞きたいですか?」


「言ってみろ」


「それはですね……ベッドを共にしていただければ私が魔界に帰れぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ痛ででででででででででででででででででででででででででででぇ!」




 スープレックスで倒したところにアキレス腱固めだ! 今日も技が冴え渡るぜぇ!




「ちょ、ギブ! ギブですギブ!」


「まぁせっかくだ。このまま腱の一本や二本切っていけよ」


「そんな煙草吸うみたいな感じで腱を切れますかぁ!?」


「うるせぇなぁ。サキュバスだろ?」


「サキュバス関係ない! 痛みはサキュバス関係ない!」


「確かに」


「納得したなら解いて! 技を!」


「すまんな。いや、本当に申し訳ない」


「だから! そう思うなら! 解いて! 早く!」


「まぁいいじゃないか。俺達もう三年だぜ? そろそろ、な?」


「そんな“赤ちゃんどうしよっか”みたいなテンションで腱切ろうとしないでください! ハラスメント! ハラスメント事案ですよ!」


「まぁしょうがないところあるよな」


「ない! ないですからそんな事! あ、あ、あ、あだ、だめ! 切れる! 切れちゃう!」


「おら! 切れろ! アキレス腱痛めろ!」


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」



 ブチィ。



「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」


「ふぅ……あ、まだいたのお前? 帰っていいよ?」


「き、鬼畜……この鬼畜! 本当にもう、最低! 最低ですよピカ太さん! この世界一可愛いムー子ちゃんに向かってよくもまぁこんな真似を! でもよく考えたらこれって照れ隠し的なあれかもしれませんね! ほら! 素直になれなくて意地悪しちゃうみたいな! ピカ太さんそういうところある! 私には分かっちゃう! ほら! 本当は好きなんでしょ! 素直になっちゃえ! ほら! え!? なに? 急にのしかかってきてなんですか!? きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! そういう感じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? エチチチチチチな感じぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!? やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 私ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ魔界に帰れるぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅうぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ袈裟固めぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ……」


「……」



 今日も変わらず、うるせぇなぁ……

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俺とサキュバス 白川津 中々 @taka1212384

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