サキュバス、メイドインヘブンのためにドロローサへの道を歩みました29
「まぁ早い話、この店を話貸し切ったんだよ。しばらくの間」
「貸し切った? オープン一発目から? そんなお店ある?」
「う~ん、口で説明するより~オーナーからのメッセージ見た方が早いかな~。というか、ワイルドボルトちゃん宛てに着てないの~? あの人~そういうとこ抜け目なさそうなんだけど~」
「あ、メッセージいただいているんですね。すみませんスマートフォン見てなくって、ちょっと確認してきていいですか?」
「別にここで見てもいいよ~?」
「すみません。ロッカーの中に置いてあるので」
「うわ~真面目ね~絶対ゴミのポイ捨てとかしないでしょ~」
「え? はい。した事ないですね」
ゴミのポイ捨ては割と引く悪事だぞ。ピチウがそんな事するか。
「じゃあ、ちょっと確認してきますねー」
「は~い」
……
「……それにしても、メイド服似合ってましたねワイルドボルトちゃん。私程じゃありませんが」
「おい。そういう目で見るな淫魔。二度と太陽を拝めないようにしてやるぞ」
「おーこわ! ピカ太さぁん。このチンピラっぽい感じなんとかしてあげてくださいよぉ。印象最悪ですよぉ?」
「とはいえ元はサイコ野郎だからなぁ。社会的合してるだけマシってもんよ」
「そうかな~私は心配だな~ピカ次さん」
「お、クリスタルちゃんもそう思う? 実は俺もそうなんだよ。こいつこのままだと絶対将来孤独死するからさぁ。役所とかに迷惑かけそうだなって」
「そうじゃなくて~。なんか~発想が極端? みたいな感じ~? あんまり考え過ぎない方がいいような気がするな~私~」
「確かに。馬鹿の考え休むに似たりというしな」
「誰が馬鹿だ」
「痛い! おま、キドニーブローはやめろって! 洒落にならんから」
「お前が余計な事を言うからだ」
「ともかく~もうちょっと自分のために生きてもいいと思うし~ピチウちゃんにも執着しない方がいいと思いよ~? 大きなお世話だけど~」
「本当に大きなお世話だな。俺の人生をお前にとやかく言われる筋合いはない」
「ま、そうなんだけどね~。だけど少しだけ頭の片隅に置いておいてくれると嬉しいかな~。たった一度の人生だし~」
「俺の一生なんざどうだっていいんだよ。つい最近まで死んでいたようなものだしな。それに、俺が好きなように生きるとピチウが悲しむ」
「詳しくは聞かないけど~、今の生き方を続けていても、結局ピチウちゃんは悲しむと思うなぁ~」
「……」
「どう生きるかは個人の自由だし~? ピカ次さんの意思は私にはどうする事もできないからね~。後悔しないようにね~」
「言われるまでもない」
「なら、よかった」
カウンセリング?
九雲スイのアドバイスは正論だが、ピカ次君の心に届いたかな。確かに、このまま妙な生き方をしていたら返ってピチウの心を縛る事になるやもしれん。とはいえこいつが好き放題したら今度こそ連続猟奇殺人事件が勃発してしまいそうなんだよな~。何とか法の範囲内でスカッとした生き方させられてやれねーかなー。
「ピカ次さん。困った事があったら私を頼ってきてもいいんですよ? 晩御飯のおかずから夜の営みまで幅広く相談にのれちゃううえに身体でご期待に応える事までできちゃうんですからね! ピカ太さんもついでにどうですか!? みんな揃ってりんかーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん!」
俺とピカ次君のダブルストレート! 両頬に突き刺さる拳の上から伝わる確かな衝撃! ムー子の奥歯を粉砕だ!
「……なんかもう見慣れちゃったなぁ~暴力行為~」
「無論これもマジックだから安心してくれ」
「はいは~い」
九雲スイの理解力とムー子の再生力に感謝!
「お待たせしましたぁ。確認してまいりましたぁ」
「お帰りワイルドボルトちゃ~ん。ま、そういう事だからしばらくよろしくね~」
「はい、分かりました。それにしてもお兄ちゃん。大丈夫なのお金。結構高いよ?」
「あぁ。それについては大丈夫だ。おいムー子。お前、ここの支払い頼むぞ」
「え? なに言ってるんですか。普通に嫌ですよ」
「まぁそういうな。ただとは言わん。お前、今日遅刻しただろ?」
「ギリ! ギリセーフです!」
「それ、課長の前でも同じ事言える?」
「……」
「言えないだろう。そこでだ。課長には俺からお目こぼしてもらえるよう言っておいてやる。あいつの苛烈さを考えれば、ここで金を払っておいた方がいいと思うぞ?」
本当は既に詰めを緩めるよう手配済みだが、交渉の材料としてそれを言うわけにはいかない。あくまで効果が期待できる手を準備していると伝える事が必要なのである。
「……はぁ。分かりましたよ。ピカ太さんにはかないませんね」
「よろしく。おまけで余ってるボトルマンやるよ」
「いりませんよ……じゃあ、今のうちに払っちゃいます。クリスタルちゃん。すみません。お会計お願いします。電子決済で」
「え? うち、カードと現金だけだよ?」
「え?」
「え?」
うっそだろお前!
「すみませんピカ太さん。お力になれそうにないです。でもゴス美課長には一言よろしくお願いします!」
「ふっざけんじゃねーよ! ちょ、ぴ、ピカ次君。少し、持ち合わせ合ったりしない?」
「ない」
「嘘だろ! カードとかは!?」
「俺は設定上未成年なんだ。作れるわけないだろう」
「そんな!」
「未成年……ミセイネン? ピカジサンハセイジン……ミセイネン……」
あ、いかん! 催眠が解けかけている! どうしよう! あと金も! 金の問題も! ゴス美には払うと言っちまったし! 払えるが払いたくねぇ! 二桁万円だぞ畜生! なんでこんな事に!
「大丈夫ピカ太お兄ちゃん。お酒でも飲む?」
そんな場合じゃ……!
……
いや、もういいや……
「……一番強いやつをくれ」
「は~い。ちょっとまっててね~」
……疲れちゃったよ。何も考えたくねぇ。
「なぁピカ次君」
「なんだ」
「生きるって、大変だな」
「俺の半生奪って生きてきたんだ。せいぜい、苦労する事だな」
「……そうだね」
人生、ままならんなぁ!
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