私の特別な暇つぶし

タマゴあたま

私の特別な暇つぶし

「暇だねー」


 私は悠斗に話しかける。


「俺は暇じゃない。っていうか暇なら帰れよ。なんでいるんだよ」


 ここは悠斗の部屋。悠斗は勉強してる。えらいなー。


「一人じゃ退屈なんだもん。話し相手になってよー」

「話し相手なら電話でもいいだろ」

「電話だと顔見えないじゃん」

「ビデオ電話とかあるだろ」

「直接会って話すのが良いの! ねー。悠斗もこっちきてマンガ読もうよー。勉強なんて後で良いじゃん」

「良くないし、俺は読んでるから結末を知ってるの。今読んでるミステリーの真犯人を教えてやろうか?」


 悠斗はニヤリと笑う。


「なんてこと言うの!」


 私は必死に首を横に振る。ネタバレなんて絶対嫌だ。


「だいたいなんで俺の家なんだよ。俺の家まで三十分ぐらいかかるって言ってたよな。往復で一時間。時間がもったいないだろ」

「電車の中で音楽を聴いたり動画を見たりしているからもったいなくはないよ。それに、悠斗の一時間を奪ってるわけじゃないし」

「それはそうだけどさ。もしかして友達が俺以外にいないのか……?」


 悠斗が哀れむような目で見てくる。


「友達くらい居るよ!」

「じゃあそいつの家行けよ」

「女子同士だと遊びに行くのにお菓子とかを持って行かなくちゃいけなくてさー。暗黙の了解ってやつ? 男子の家だと行きにくいしさ」

「女子同士だと大変なのはわかった。でも俺だって男子だぞ」

「小さい時から遊んでたからそんな感じしないんだよね。それに、悠斗が前に言ってたよね。『退屈だったらいつでも来い』って」

「それって確か小学生の時の話だろ。家が近くだった頃の」


 私は中学生に上がる頃に引っ越した。といっても、そんなに離れていない。


「一生言い続けるもんねー。小学生で思い出したけど悠斗が『大きくなったら結婚しようぜ』って言ってたの覚えてる? 今考えると恥ずかしいねー」


 私はニヤニヤしながら悠斗のほうを見る。


「覚えてねーよそんなこと」


 悠斗がそっぽを向く。

 でも耳が赤くなってるのバレバレだからねー。こっちも一生言い続けてやろう。

 ていうか、ただの男友達だったら三十分もかけて遊びに来るわけないでしょ。

 にぶいやつだなー。

 まあ、はっきり言わない私も私なんだけどね。


 今の関係が嫌いなわけじゃない。

 これは私の特別な暇つぶし。


「(覚えてないわけないだろ。ずっと想ってるんだから)」


 考え事をしていたからか、悠斗が何て言ったか聞こえなかった。


「悠斗、何か言った?」

「何も言ってねーよ」

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