【企画入賞レビュー】現実にようこそ、お嬢さん

母を失った悲しみから本の世界に没頭し、フィクションの基準でしか物を考えられなくなった令嬢アリシア。そして、彼女の気を惹くためだけに物語のキャラクターに成り切って自分を偽るステファン。いわばオタク系女子と男性コスプレイヤーの恋愛譚なのですが、それをファンタジーでやろうというアイディアが実に素晴らしかったです。
現代ドラマであればどうしてもある種の「痛さ」を感じずにはいられない騎士や貴族のコスプレでも、異世界であれば至って当たり前な微笑ましい風景。おままごとの恋愛ごっこを演じながらも高貴な雰囲気を損なうことなく、華やかな男女関係を見事に構築していました。

そして、たとえ始まりが「ごっこ」であろうと、真に相手を思いやる気持ちがなければおままごとは成立しないもの。次第にアリシアは疑問を抱き始めるのです。
自分が本当に好きなのは物語のキャラクターなのか、自らを偽り続ける名男優ステファンなのかを。

二人とも不器用で純真。だからこそ応援したくなるし、ごっこを越えた現実の恋が美しく輝くのでしょう。
麗しき貴族の恋愛譚をお求めであれば、是非!