第60話 その6 完結

 それから1週間ほど経った。


 [パンチラファイト]はまるで無かったかのように、誰もしなくなった。

 女の子同士の悪ふざけでめくりあうのは、たまに見かけるが、まあ普通の範囲だろう。


 代わりに流行ったのが、[ドッキリシュシュ]である。


 インフルエンサーのカトーちゃんが、ファンクラブのネットワークで[片足にシュシュを通しておいて、スカートの中からそれをまるで脱いだようにみせて、ドッキリさせるイタズラ]の動画を投稿したのだ。


 なんかあんまり変わんないとは思うけど、少なくとも男子がスカートをおろそうとせずに、期待して待つくらいには、なっているようだ。


 もう、はっちゃんみたいな被害に会うコは、いなくなるろう。


 そのはっちゃんは、究との親睦を深めている。

 なぜ知っているかというと、昼休みの食事をあたしと一緒に究と食べているからだ。

 律儀にはっちゃんパパの約束を守って、2人きりにならないようにして、あたしに一緒にいるように頼んできた。

 それに付き合うあたしも、ヒトがいいと我ながら思う。まあコーヒーが飲めるし、究に情緒が身に付くならいいか。


 タカコとムトーちゃんは、夏の大会に向けて部活にいそしんでいる。

 カトーちゃんも、読モの仕事が充実しているらしい。

 ビトーちゃんは変わらず、かわいい。


 元の日常に戻った。けど、ひとつだけ変化があった。

 葵先生が副担任になったのだ。

 北方先生が、健康診断で何かに引っかかって通院の為に日中いない場合が出来てしまったから、補佐の為になったそうだ。


 2人の間柄はバレないようにねと、釘を刺された。了解。


 そしてある日の昼休み、タカコがじゃれながら訊いてきた。


「けっきょくさぁ、あげはってパンツ履いているの? 履いてないの?」


「どうでもいいじゃん、そんなこと」


「いいじゃん、教えてよー」


「しょうがないわね」


あたしは立ち上がると、スカートの中に手を入れて、脱いでみせる。


「ちゃんと履いているわよ」


脱ぎたてのくしゃくしゃの布を見せて、タカコを驚かせるが、カトーちゃんにツッコまれる。


「サトーちゃん、騙されちゃダメよ。それ、シュシュじゃん」


「バレたか」


しじみのプレゼントのシュシュを、さりげなくしのばせて脱ぐ真似をしたのだ。


「なんだ、びっくりしたじゃん。結局どっちなのよ」


「どっちでもいいじゃん、そんなの。でもね」


シュシュを手首に戻しながらタカコに言う。


「はいてた方が安心よね」


ーー 了 ーー

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あげは紅は◯◯らしい 藤井ことなり @kotonarifujii

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