4 しのごのいわずにごじつだん




 ある休日のことです。

 鎌瀬かませ先生が自宅のパソコンに向かって、今後の授業に使うプリントをつくっていると――先生のスマートフォンに、一通のメッセージが届きました。


「ん……? ツイッターを見ましたか……? 何かな――」


 メッセージならスマホに送ればいいのではと不思議に思いながら、先生はせっかくなのでパソコン上でSNSの画面を開きます。


 すると、いわゆるアカウントのホーム画面に――画面いっぱいに、風船が舞い上がりました。


「おっ――これは――」


 そう、本日は鎌瀬先生の誕生日だったのです。生年月日を登録したことで、ホーム画面が誕生日仕様になっているのでした。


「これを見せたかったのかな……」


 可愛いところもあるものだなと、先生は思わず笑みを漏らします。


 せっかくだから何か返事でも送ろう――そう考えた先生の視界の端に、ふと、本日のトレンドが映りました。

 画面の端にある、ツイッター上でいま話題になっているツイート、ハッシュタグを一覧にしたその中に――



 『鎌瀬アラタ生誕祭』



「ん!?」


 思わず、目を剥きます。そして自分の目を疑いました。


 なんということでしょう、ツイッターのトレンドに――何万もの人たちが、鎌瀬先生の誕生日を祝福ツイートしているのです。


「え? え……? えぇっ!?」


 いったいどんな魔法を使えば、こんなことが起こるのか――




                  ■




「――ウィンウィンの関係になれる、とっておきのお話ですよ」


 そう言って、綴居つづるいさんは漫多まんださんにこっそりと耳打ちします。


「件の、誕生日を明かしていない例のキャラクター。その誕生日が29日だと公式から発表してください。前日にツイートするのです。そうすれば――ええ、日曜日はちょうどアニメの放送日とも重なりますから、トレンド入り間違いなしですよ」


 なにせ『カマセ先生』は作品屈指の人気キャラクター――


「その日のために、こうして――作品づくりに協力してきたのです。誕生日くらい、私が決めてもいいでしょう?」


 とっておきの魔法サプライズはきっと、いつまでも記憶に残るでしょう。



                             めでたし、めでたし



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

かまたん~彼女は魔女で、探偵で~どうせなら魔法少女と呼んでくださいな 人生 @hitoiki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ