使い古されたネタだからこその完成度

さて、ロボットやAIやアンドロイドなどの人造のものが「心」を持っているのか、「愛」を知ることはできるのか。

本作で扱われているこのテーマを語るにおいて古田足日の「アンドロイドアキコ」を持ち出さざるを得ないだろう。詳しい内容は割愛するが、これも本作と同様にアンドロイドが「愛」を知る話であり、これが実に1964年──今から60年近く前に発表された話である。

逆に考えれば、60年近く前からこのテーマは用いられており、いまだに人の心を動かすテーマでもある(星新一のショートショートにも似た短編が複数あるので気になる方は触れてみるのもいいだろう。)。

似たテーマであるものの本作は少し毛色か違うかもしれない。前半部分ではロボット視点で語られるのだが、相手の反応が人間にしてはいまいち薄いというか、違和感を覚える。その正体は後で明かされるのだが納得の結末だった。

もちろん、テーマの持つ力と歴史に裏付けされた、ひたすら心地の良い短編である。

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