愛と苦しみは紙一重

 人間誰しも好きな相手のことはなんでも知りたくなるものです。
 この小説の主人公である花恋ちゃんは少しそれが行き過ぎていただけ。知りたいが故に普段は見れないもの、愛する相手が苦しむ表情や傷から溢れる血すらも愛おしく感じてしまう。病的と断じてしまうのは容易いですが、それだけ愛が深いのだと思います。

 そんな花恋ちゃんに好かれてしまった幼なじみの渚ちゃんは、花恋ちゃんの性癖に戸惑いながらも、渚ちゃん自身も花恋ちゃんのことが大好きなので、なんとか受け入れようとする。その姿を見て花恋ちゃんも罪悪感を抱きながらも恋人を傷つけることをやめられない。
 究極のジレンマによる完成した焦れったさ。もどかしさ。幼なじみ故の相手を信頼しきった甘いやり取り。それらの要素をまるで飴と鞭のように巧みに操りながらも、二人を幸せな関係に導いていく作者様の技量に感服です。

 闇が深くともどこか温かい。そんな百合をぜひともご堪能いただければと思います。