東北の片田舎、夏の原風景のような一軒家で同居する、片付けができない叔父と大学生の甥の日常には、常に怪異の影がちらつく。
悪人が入ると災いの起こる蔵、見る者ごとに姿を変える佳人、ロバのような足跡を残す見てはいけない何か……。ひとならざるものとの共存は「そういうものだ」という無関心で成り立つ。それは、理解不能な怪異に遭遇しつつ淡々と生きる叔父と、呆れながらもついていく甥との共同生活にも重なる。その関係は決して冷淡なものではなく、過干渉を良しとしない誠実さと、理解できないものはそのままに尊重する仄かな情が根底にあることが伺える。
本作はホラーだが、禍々しくひとを脅かすおぞましさはなく、怪異があっても変わらない匂いたつほどリアルな情感で浮かぶ東北の日常生活が一番の魅力だ。
真夏でも寒々しい影が差す東北の奥地で、壁一枚を隔てつつ、つかずはずれずの距離で暮らす叔父と甥。冷たさと温かさの配分がちょうどいい、緩慢で退廃的で良質な短編連作ホラーだ。
(「ホラー×〇〇」4選/文=木古おうみ)
薄ら怖いけど可笑しみを感じる作品です。
ひょんなことから叔父の所にやって来た主人公が体験する、怪談や得体の知れないモノが満載で、凄く好みの作品でした。
作中で語られる怪談の面白さをより引き立てるのは、世間一般的には駄目人間な叔父さんのマイペースさです。怖いものを素直に怖がる主人公とは真逆で、叔父さんは全く意にも介しません。どころか主人公の恐怖を煽るような事ばかり言うのです。
けれどその二人のやり取りがとても面白可笑しく、良い意味で滑稽なんです。
ホラーなのに腹の底では燻るような笑いが蠢くと言ったら良いのでしょうか、そんな読むと癖になる作品でした。いやもう凄く好きです!!
しかも問題児たる叔父さんは案外奥深い事を言ったりしているので、そこもまた単に怖さを楽しむだけの怪談作品(それはそれで大好きですが)とは一味違うなあと思いながら読ませて頂きました。読んでいて楽しかったです!
怪談系コメディとも言えるこの作品、是非に是非にご一読下さい!\(^o^)/