最終話 俺の神級の召喚獣
その時ふと思い出した。
この二人は自分の世界に帰りたいと召喚した時から言っていたことを。
闘技のこととかが一気に来たせいですっかり忘れていた。
そうだ、帰りたいのだ、こいつらは。自分の家族が待っている自分の時代に。俺に協力すると言ったのも闘技まで、だからこいつらの役目は終わったのだ。
「じゃあ、町や城を散策しながらお前たちの帰る方法をみつけるのも同時進行していこう」
「え?」
「あ?」
この時の二人の顔は「何言ってるんだ?」と言ったように拍子抜けをしていたようだった。
「なんだ、その反応は?」
「いや、俺達もうしばらくここにいるつもりだから、まだ探さなくていいぞ?」
「え?」
「リョウバ殿は帰ってほしいでござるか?」
「それは思っていないが」
俺の方がその応答にびっくりした。最初はずっと帰りたいと言っていたこいつらが、しばらく帰らないといったことに。
「闘技に協力したら帰ると思ったのか?」
「拙者達の協力はまだ終わってないでござるよ」
「終わってないって」
意味が分からない。
ユウ斗と都獅は横に並び、俺を見た。
「俺様達は決めたんだ。リョウバ、お前が王になるのを見届けたい、それから帰ろうってな。ま、召喚されたのも何かの縁だし」
二カッとユウ斗が笑うと
「家族は今でも心配でござる。しかしそれ以上に今はリョウバ殿のほうが心配でござるよ」
と都獅も笑顔を零した。
改めてこの二人は凄い人間だと俺は感じた。
今だけ俺は兄貴に感謝をした。
この二人は兄貴がいなくなって、それで俺が召喚をさせられて出会えたから。
この二人の笑顔を見ていると俺は自然と安心が出来る。
俺は今、こいつらのためにこの国の王になりたいと心からそう思った。
「リョウバ行くぞ!」
「ユウ斗殿、ライカが真似するでござる」
「いくぞ!」
「いくぞ!」
「ユウ斗殿、ライカ!」
都獅はお父さん的ポジションだな。
くすっと俺にも笑みがこぼれた。
「待っていろ、筋肉痛でうまく動けないのだから」
「突っついてやろうか?」
「やろうか?」
ライカは面白いのかずっとユウ斗の真似をしている。まるで兄妹のようだな。
「やめろ!」
「リョウバが怒ったぞ!」
「怒ったぞ!」
「拙者を巻き込まないでほしいでござる!」
勢いよく部屋を飛び出て、俺は筋肉痛に悩まされながらも必死に走った。
久しぶりに楽しいと思える時間が始まりそうだ、そう思った。
俺の王への道のりはどうやら長いらしい。
END
俺の召喚獣は刀とスパナを持っている 森 椋鳥 @mu-ku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます