未来の視点から始まり、そこへ至るまでの男と少女の出会い、そして絡み合う様々な人間ドラマが、非常に巧みな描写と共に語られていきます。
かつて夢を追い、諦めた男律人と、類まれな才能を持ちながらもその夢を諦めざるを得ない状況にいる女子高生真莉愛。ある夏の日に彼らは出会い、そして互いに無くてはならない存在になっていきます。
中盤から終盤にかけて一気に惹きこまれ、そして冒頭にあった未来のシーンがちらつき、ある「予感」を抱えながらも読み進める手が止まりませんでした。
タイトルにある「ふたつの夢」とは? そして二人の行く末は?
コンサートのように、心が揺さぶられ、読み終わった後に言葉に表すことのできない感動の余韻が生まれる作品です。
夢を諦めてしまった方、今まさに夢を追っている方、まだ夢が見つからない方、誰の心にも響くことは間違いなしです。
一度みた夢は心のどこかに隠れ住み、それは何かのきっかけで再び姿を表す。或いは、形を変え誰かに託すことができる。
たとえ現状がどんなに困難で、絶望的でも夢を叶えるきっかけはどこかに身を潜めている。
夢を失い、家族を失い、ただ生きていた男が一人の少女と出会う。ピアニストという夢を持っていた二人の出会いは、ショパンの音楽が繋ぎ多くの人の音と共鳴し、一つの曲を生み出していく。
その過程は楽しいことや、美しいばかりではなく、苦しく理不尽なことも多くある。それでも、苦しみ悩み必死に奏でる音は飾りのない等身大の曲を届けてくれる。
人の優しさ、強さ、可能性に触れることのできるこの作品を読んでみませんか? きっと心地よい音楽に包まれ、暖かい気持ちになれると思います。
ご縁があり、この物語に出会いました。読み終えましたので、レビューさせていただきます。
生きる目的を見失い日々を惰性で過ごしていた主人公の男性が、アパートの玄関前で座り込んでいた少女と出会うことから、物語は始まります。
その出会いは、おそらく必然だったのでしょう。関わっていく内にやがて主人公の彼は、己の過去と彼女を重ね、前を向き始めます。
この物語の見所は、濃厚な人間ドラマでしょう。主人公の彼とヒロインの彼女はもちろん、他の主要な登場人物達の思いに触れられそうなくらい書いてあり、いつしか彼らに引き込まれていきます。
特別なことなんてない、ありふれた思い。だからこそ、読んでいて共感してしまったと、私は思っております。そして思わず読み進めてしまった、作者様の見事な腕前ですね。
彼らの息遣いさえ聞こえてきそうな、彼らの物語に飛び込んでみませんか?
他の皆様も是非読んでみてください。