圧倒的な空気感をもつ名作

まず本作で顕著なのはその空気感である。作品全体で生み出されたこの雰囲気にあてられ、没入する読者も多いと思う。

多くは語らず、表現も凝るわけではないが、それゆえに心情や情景、ストーリーが直接頭に届く。

また、自然な文体ではあるが、言葉が丁寧に綴られており、非常に詩的。

このように手先の技術で誤魔化さず作品全体の雰囲気を醸し出せるのは相当な感性、文や行間の感覚が必要だろう。

一介の物書きとしてただただ脱帽する名作。

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