第四話

「ミケくん遅いのな〜」

「仕方ないじゃないですか!これでも結構飛ばしてるんですから・・・」

「もー!もっとマシな車乗って来なさいよ!」


あれからDDの車を必死で追いかけたミーナ&ナーミだったが、凄まじいドライビングテクニックによってあっという間にまかれてしまった。

仕方なく諦めた三人はエルデネとカンタローザーを結ぶ一本道をゆっくりと進んでいる。


「それにしても、本当にあの補佐官を追う価値なんかあるんですかね・・・」

「何よウチの記者の勘が信じられないって〜の?」

「ミケくんあきらめるのな。ミーナが追うって決めたらもう止められないのな」

「まぁ、あの補佐官との関係あばいて他の魔王に情報売るって手もありますからね。ファシルス様やプライム様あたりは策士っぽいですから、本命とはいえなんだかんだ高値で買ってくれたりして。そしたら僕にも分け前くださいね!」

「ミケくんは結構ゲスいやつなのな〜」

「そんなっ・・・」


キキキキキーーーー


突然、ミケが急ブレーキを踏んだ。車がスリップし道を外れて急停車する。


「なんなのよ!あぶないわね!」

「いや、誰かが突然・・・」


良く見ると道路の真ん中に男が寝転がっているのが見えた。

三人は車を降りて恐る恐るそばに寄った。


「お〜い、大丈夫ですか〜?」

「あんた本当に轢いてないんでしょうね?」

「だから轢いてないって言ってるじゃないですか!急に現れたんですよ、さっきまで何もなかったのに・・・」

「きっと死んでるのな?痛かったのな〜御愁傷様な〜」

「ちょっと〜!」


ミケが男の側まで近づき、体をゆっくりと揺する。


「うっう・・・」

「大丈夫ですか!!」

「す、すみません・・・すぐっ、すぐやります・・・」


男はゆっくりと上体を起こし、両腕を前に伸ばし指をカタカタと動かし始めた。


「あーあ、これは重症なのな」

「も〜やめてくださいよ・・・」


ミケが男の前にまわり両手をそっと手に取り、しっかり顔を見つめ男の状態を確認する。


「お怪我はないですか?僕とヤらないか?」

「ちょっと・・・、ミーナさんこんな時に僕で遊ぶのやめてくれません?」


「え?ケモミミ?!」


突然、男が声をあげてあたりを見渡す。


「えっ?なんですかここ?コミケ?コミケの仕事してたんだっけ?あれ?」


男が狼狽した様子でポケットを探りモバイルを取り出し愕然とする


「で、電波が・・・ない!」


男はあわててあたりを走り回ると、ブツブツと何かを呟きながらモバイルの画面を何度も何度も確かめている。


「ヤバイわね・・・アレ。あんた責任とりなさいよ・・・」

「責任とって結婚するのな」

「だから轢いてないんですって!ってなんで結婚?!」

「きっと当たりどころがわるかったのよ・・・」


ヒソヒソと話しかけてくるミーナ&ナーミに少し不安になってきたミケが男に声を掛ける


「ちょっと〜、ほんと大丈夫っすか〜?怪我してないですよね?カンタローザーまでだったら乗せてくんで!一回落ち着いてください!!」

「す、すみません!!で、電波のある場所まで連れていってください・・・!」


泣きそうな顔の男を乗せ、ミーナ&ナーミの車はカンタローザーへ向かった。男の名前は『スナガレ』と言うらしい。名乗った後もずっとブツブツ独り言を言いながら何かに怯えモバイルの画面を確認している。そんなスナガレにナーミが話しかけた。


「ねぇあんた、もしかして転生者?」

「て、転生者?やっぱりここはどこかのコミケ会場なんですか?」

「コミケってなんな?なんだか香ばしいのな」

「ほら、やっぱなんか噛み合わないのよね。転生者の可能性ありよ」

「転生者ってなんですか?」


ナーミたちの話についていけないミケが口を挟んだ。


「ほら、世界を救うために何万年に一度現れるという伝説の救世主的な・・・」

「こんな小汚い救世主いないのな」

「それもそうね・・・でも・・・」

「ミケくんの運命の人なのな!」

「ミーナさん、僕に変なキャラ植え付けるのやめてください・・・」

「あ、あの、すみません記憶がはっきりしていなくて・・・。ここはいったいドコなんでしょうか・・・?」

「ここは、魔界アルドラマよ」

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七魔王の総選挙 HAGEFiLL @HAGEFiLL

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