孤独に寄り添うもの。病は孤独。されど、寄り添う愛に溶け込む心

 病は辛いですよね。それも、夢を諦めなくてはいけないほどの重病であればなおさらのこと。家族や想いを寄せる人から離れた遠い地で、医師から告げられた言葉に、主人公は酷く打ちひしがれます。

 病とは健康な人からしてみれば、遠い対岸の火事のようなもの。病という沼で喘ぐ人の心に同情はできても、真の理解は難しいと思います。

 そんな孤独に寄り添うものが愛ならば、それは、苦しむものにとって、とても勇気づけられる心の良薬となるのかもしれません。

 このお話には、様々な形の愛が存在します。先生だったり、父や母だったり。或いは想いを寄せる人だったり。主人公は、その後どうなったのかを知る余地はありませんが、伝えた想いは伝わったのではないか——律との手話のシーンを見ればなんとなくそう感じさせます。

 受け入れてくれる愛があるのなら、きっと静かに優しく生を全うできるのではないでしょうか。私の解釈で申し訳ありませんが、そんなお話なのではないかと思います。