残された最後の人類が過ごすプラントを舞台とした本作。恐ろしいほどに練られた設定と世界観。そしてそこで暮らす人間たちの心理が繊細に描かれます。これはもう体験していないと書けないのではと思うほどのリアルさ。未来を擬似体験している気分になります。そして、これはあくまでも小説であるということ。物語としての完成度もまた鳥肌ものです。つける星の数が三つでは足りない。そんな作品です。
世界は、主観的に滅びました。閉鎖空間に、最後に生き残った人たちのため、主人公と友人はVR装置を改造します。娯楽映像を提供するだけだったそれは、ついに膨大なデータから時間経過をシミュレーション、仮想未来を創造することが可能になります。もう存在しない美しい世界の今とこれから、もういない家族や恋人との今とこれから……それは何よりの慰めでしょう。ですが「記憶の連続性」をどうするかで、二人の意見が分かれます。現実を現実として認識したまま仮想未来を楽しむか、現実を忘れて一時の仮想未来に身をゆだねるか。主人公と一緒に、心の迷路で遊んでください。
もっと見る