Epilogue
彼女は感謝している。今こうして音楽に夢中になって、充実した日々を過ごせているのはあの時のことがあったからにほかならない。
もし、あのとき……音楽のすばらしさに気が付かなかったら。
もし、あのとき……自分もその手で音楽を奏でたいと思わなかったら。
もし、あのとき……あの子が声をかけてくれなかったら……。
いくつものもしがあふれ出てくる。一つでも欠けていたら今の彼女はここにいなかったのかもしれない。
一つも欠けることなく音楽と出会い、そのすばらしさに気が付けたことを彼女は奇跡だと思っていた。
確かに奇跡的だ。だが、仮にどれか一つが欠けていても彼女はきっと音楽と出会ったであろうし、すべてが欠けていたとしても違った形で音楽のすばらしさに気が付いたのかもしれない。
本当のところは誰にも分からないが、きっと今この結果が運命なのだと彼女は思うことにする。小さな奇跡の積み重ねこそが運命なのだ。
『God Save The Queen』
この曲を聴くといつでもあの時のことを思い出すことができる。昨日のことのように。彼女にとって忘れられない曲。彼女も救われていたことを思い出す曲。
「ねぇ。次はさ、God Save The Queenでいきたいなって思うんだけど、どうかな?」
以前とは違う、自信に満ちた目が彼女を見る。
「カバー曲だと嫌がられるかな。もうオリジナルかって思われるくらい大胆にアレンジしてやろうと思ってるんだけどさ。」
そう言って舌を出す仕草にどことなくあの頃の面影が浮かんだ。
「あたしは良いと思うよ。うん。あたしも絶対次はGod Save The Queenのカバーが良い。」
彼女はそう答える。
「良かった~。それならあとはあの2人を説得するだけだね。ナナカ自信ある?」
「もちろん。必ず説き伏せるよ。あたしとエリの大事な曲だもんね。」
彼女はそう言うと破顔した。
God Save The Queen(シングルVer.) 宇目埜めう @male_fat
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