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紅い大地の遥かな先に古い蒸気機関車が黒い煙を吐き散らし、しゅっぽしゅっぽ、ガタンゴトンとまったり車輪を回していた。線路は地平線の彼方まで続き、その終わりは数え切れない時を経なければまだ訪れないとわかる。空はまた玉虫色に蠢き、終末の予言を囁いていた。
けれどもその古い蒸気機関車はいつまでも変わり続ける。時を経るごとに騒がしく喧しく、それでいて楽しそうな声がだんだん大きくなっていくのだ。見ると、その蒸気機関車には二等客車まで様々な存在が載り入れていた。人間はもちろん、犬や猫に鼠、果てには地球にはいないであろう奇妙な生物まで。どうやらこの大地の遥かな開裂を目指そうと歩き始めたものたちは、彼らだけではなかったようだ。
そして、蒸気機関車はしばらく進むと、乗客たちに言った。
「どうやらまた見つけたようだ――」
その蒸気機関車は、その存在の傍らに正確に停車し、こう言うのだ。
「わたしは旅人のヌーフ。もしきみが新たな生き様を歩みたいのなら、わたしや仲間と共に、この遥かな開裂を目指してはみないかね。旅に退屈せぬよう各々楽しい物語も用意してある」
問いかけられたその存在は一度瞬くと、蒸気機関車の姿をした彼にゆっくりと載り込んだ。
では、行こうか――。
そしてまた、歩み始める。
了
ターミナル 籠り虚院蝉 @Cicada_Keats
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