最初の十話ほど越えたらもう引き込まれます。
次が気になって仕方なくなることです。
テンポの良い会話と、すっと脳裏に浮かぶ情景。
高校生の「夏の夕暮れ」なんて特にそうでしょう。
曖昧でズルくて卑怯で、泥臭い人間臭溢れるサキとその周りの人々。
高校の頃よりも、新宿で出会う彼女らが私は好きです。人臭さが、生きることにどこまでも忠実な彼女らが。
傷の舐めたいのように思える性行為も話しを進めていけば、「この子達には、この子にはこの手段しか思いつかないのか」と思ってしまうかも。
題名や、タグに踊らされず読み進めてください。
きっとこのレビューを見てるアナタは好きな作品だと思うから。
この作品はセックスだとか風俗だとか、そういった描写が多く含まれている。その多くは、読む者に嫌悪感を抱かせたり、物語の本質を見誤ってしまうような危険を孕んでいるものだが、筆者にはそれらを許さず、自らの作品を直視させる確かな力があると感じた。
セックスや酒、未成年という言葉。それらが主人公と幼馴染の妹の関係と、故郷での暗い過去を暗示するかのように描写し、それらでしか繋ぎ止められていない関係と言うものを、ひどく儚く、心を抉られるものだと読者に感じさせてくれる。
主人公や幼馴染の妹は、自由を求めて――これが解釈としてあっているかは各々の捉え方であるが――故郷から東京と言う街に逃げてくるのであるが、この物語のなかでの東京の描写はとても閉鎖的――主人公のアパート、バイト先やメイド喫茶等々——で、自由で広大な東京と言うよりは、狭く退廃的な闇を抱えた街と言う印象を与えてくれる――それは、確かに東京と言う都市の抱える一側面でもある――。主人公の闇は、そういった描写を織り交ぜながらより深い説明がなされていくのだ。
この作品は、特に難しい言葉が使われているわけでも、文章が長いわけでもないのにもかかわらず、動作、言葉が多くの事を訴えかけてくる。
話はまだ途中。完結するまで追いかけたいと思える作品だった。まだ読んでいない方は、ぜひ読んでみることをおすすめする。