第28話 幸福な道
「支えていきたいか……ふふ、それは面白いことを言うな」
「面白いこと?」
決意を伝えた私に、リンドラ様はそう言ってきた。
面白いこと、それは一体どういうことだろうか。
「お前は、既に俺を支えてくれている。少なくとも俺は、そう思っている」
「え?」
そこで、リンドラ様はそう言いながら私に近寄ってきた。
私が、既にリンドラ様を支えている。そのようなことを言われるとは驚きだ。
私はまだ何もしていないのに、それで支えられていたのだろうか。
「お前が傍にいてくれる。それだけで、俺は支えられているのだ」
「そ、そうなの……」
「ああ、そうなのだ……」
リンドラ様は、私の頬に手を当ててそう言ってきた。
まさか、傍にいるだけで支えられているとは思っていなかった。
それは、よかったとは思う。だが、そんなことに支えになっているのだろうか。
「俺の中で、お前……サフィナの存在は、とても大きなものになっている。日々が進む内に、そうなっているのだ」
「そ、それは、私も同じよ。私にとって、リンドラさんの存在はとても多くなっている。リンドラ様がいなければ、私はきっとこんなにも楽しく毎日を過ごせないもの」
「サフィナ……」
しかし、リンドラ様の言葉で私は理解した。
確かに、傍にいるだけ支えになることはある。私にとって。リンドラ様がそうであるように。
「お前と出会えて、本当によかった。コルニサス家を助けるつもりで、婚約者になったが、来てくれたのがあなたで本当に俺は幸福だった」
「それも、私の方よ。私を迎えてくれたのが、リンドラさんでよかった。本当に、そう思っているの」
リンドラ様と出会えて、本当によかった。
私は、コルニサス家の復興のためにここに来て、リンドラ様の婚約者になった。
それは、お父様に決められたことである。しかし、私は何も後悔していない。
私は最早、家の事情など関係なく、リンドラ様の婚約者でありたいと思っている。ここにいたのが、リンドラ様でなければこうは思わなかっただろう。
「これからも、ずっと傍にいてくれ……俺を傍で、支えてくれ」
「もちろん、私はあなたから離れない。これからもずっと、支えていくわ」
私は立ち上がり、リンドラ様に体を預けた。
そんな私を、リンドラ様はしっかりと抱き止めてくれる。
これからも、私達はずっと一緒に歩んでいくだろう。お互いに支え合って、歩いて行くだろう。
それは、きっととても幸福な道になる。私はそれを確信するのだった。
没落した公爵令嬢は、再興のために辺境伯と婚約することになりました。 木山楽斗 @N420
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