11 over extended. final & prologue.

 空が落ちる、夢を見た。

 何が、どういう意味だったのかは、わからない。ときどき、そういう夢を見た。予知夢と明晰夢の、ちょうど間のような幻想。

 起き上がって。着替える。

 いつもの制服。いつもの鞄。

 いつもの通学路。歩く。

 左隣。


「よお。まだ眠そうだな?」


 いつもの、台詞。


「まだ夢の中にいるみたいだよ。夢だったんだね。全部」


「まだおまえは夢の中だぜ。そろそろ起きて、支度しな」


「夢の中でも支度したのに、起きてからも支度するのか。面倒だなあ」


「右側の俺に、よろしくな」


「うん」


「そんな顔をするなよ。離れがたくなる」


「ひとりじゃないよ、最近は。右側に君もいるし」


「いいことだ。ちゃんと生きな?」


「空けとくよ。左側は。君のためだけに」


「嬉しいな。ありがとう」


 目覚めた。


 浮かんできた涙を拭う。


 また、今日が始まる。


 彼という幻想を、夢の中に残して。

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落ちる空、繋がる流星、左側の幻想 春嵐 @aiot3110

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