「よお。まだ眠そうだな?」


 右隣。


 彼がいる。


「あ、あれ。すんません。見ず知らずの人に。何言ってんだ俺」


 彼だけど、彼じゃないみたいだった。記憶もない。


「ふふ」


 ちょっとだけおかしくて、笑った。


 左右反転の。彼がいる。蜃気楼の世界の彼ではなく、こっち側の世界の、彼。


「よくわかんないけど、大丈夫、か」


 彼の言葉。彼のことが、思い出される。


「はじめまして。あなたも、学校ですか?」


「あ、ああ。同じ学校か」


「ええ」


 また。


「せっかくなので、昨日見た夢の話でも。どうですか。学校へ行くまで」


 はじめよう。


「夢の話。どんな夢か、訊いてもいいか?」


「ええ。もちろん」


 今度は、自分から話しかけて。


 今日が、始まる。

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