フリーダム・ハンティング・オンライン

内海友太

第1話

「始めるか。こんな生きづらい世界とはおさらばだ。」


 自室のベッドに横たわり、バイクのヘルメットのような顔を覆うVRゴーグルを装着した。


「--コネクト フリーダム・ハンティング・オンライン」


 頭の中がふわふわとした感覚で包まれ、意識が遠のいていく。


 --気がつくと俺は家々の並ぶ街の路地に居た。

 周りを見渡してみると、屋根の上からは大きな木が見える。遠くに見えるからあれは森だろうか。

 俺の真後ろ側の少し遠くには案内人が立っている。

 この世界に来て初めて見た人だから、近づいて話しかけてみるか。


「やあ、君もプレイヤーかい?」


「フリーダム・ハンティング・オンラインの世界へようこそ。」

 

 声を発したのは、案内用のモブキャラの女性だ。

 本物の人のように見える。よくできたゲームだ。


「初めての方ですね。お名前は何と言うのでしょうか?」

 

 名前を聞かれた。これがこのゲーム内のハンドルネームになるんだな。


「俺の名前はアヤトだ。」

「アヤトさんですね。次に身長と体重をお教え下さい。」

 

 ーーん?

 気にしていなかったが、俺は光の球体のような形をしている。

 ということは、身長と体重を少なく設定すれば攻撃に当たる範囲が狭くできるのか?

 試してみるか。


「身長は110cm、体重は23kgだ。」

「身長と体重を正確にお教え下さい。」


 対象年齢18歳以上だから、流石に露骨な嘘は無理なようだ。

 ゲーム自体がつまらなくなるから、自分の正確な情報を言うか。


「身長は175cm、体重は60kgだ。」

「身長は175cm、体重は60kgですね。」


 俺の身体が形成されていく。

 これは初期装備なのか、服もピチピチのレスリングの選手が着ているような、いかにも初期装備の服装になった。

 恥ずかしいが、とはいえこれでひとまず最初に設定する俺の情報は終わりかな。


「では、続きましてフリーダム・ハンティング・オンラインのゲームについてご説明致します。」


 やっと本題か。大々的にテレビCMとかゲームショップで宣伝されていて周知の事実だと思っていたが、一応聞いてやるか。


「このゲームはステージランクが100まであり、ランク1毎に1体のボスがいます。ソロで倒すもよし、チームを組んで倒すもよし、それでも無理ならレイドで倒してもOKです。ボスを倒さないと次のランクが解放されません。」


 --レイドを組んで倒してもいい敵を、ソロで倒せるのだろうか?


「素手、剣や銃の武器、魔法を使って戦います。他にもありますが、ゲームを進めて行った後のお楽しみです。」


 --素手を選ぶ奴がいるのか?


「ステージにあるクエストボードからクエストを受注し、依頼品の納品や小型ボスを討伐し、素材を集めます。クエストを受注しなくても敵はその辺にもいます。その敵を倒したりして手に入れて集めた素材を使って武器や防具を作成し、ボスに挑みましょう。」

「他にも要素はありますが、説明はここまでにします。たのしみがなくなってしまいますからね。」


と、何だか不気味な笑みを見せ、案内人の姿が薄くなっていく。


「最後にアヤトさんに精霊をお渡しします。ゲームでわからないことがあったらこの精霊に聞いて下さいね。」


「チューーーー!!」


「うわっ!」


 案内人の姿が消え、俺の肩に乗ってきたのは、可愛らしい白いネズミだった。


「はじめまして!僕はチュー吉!よろしくっチュ!!」


「お、おう、俺はアヤト、よろしく。」


チュー吉とは温度差が激しいが、まあうまくやっていこう。

綾人は気味の悪い案内人の笑みを気にしつつ、街を散策してみることにした。

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