労太の一日 ~野球をやってみた~
伊藤山愛
誘われたので野球をやってみたが...
この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。
__________
「おーい,
小学4年生の4月,近所に住む野球少年の
労太たちの小学校には少年野球チーム「南田ベアーズ」があった。
早速,次の日曜日の朝から労太は練習に参加した。
「いーち,にー,いちにーさんしー...」
ランニングを軽くすることから練習を始めるのだが,給食を食べすぎてぽっちゃり系男子の仲間入りをしていた労太は
「ちょ...無理コレ...」
いきなりダウンしていた。
「労太,頑張れまだ野球始まってないぞ」
コーチにそう言われた労太は
「野球怖いぃぃぃ...」
そう言い残して,ダッシュで逃げ出した。
「あいつメッチャ足早いやん!!」
ランニングが終わるとマウンドを中心にして円になり準備運動が始まった。
「体しっかり伸ばしとけー!!怪我すっぞー!!」
コーチがそんなことを言いながら回ってきた。
怪我をしたくはないので労太はまじめに体を伸ばした。
「柔軟だー。腰下ろして脚広げて体を前に倒せー」
そんな指示があったので労太も行う。
「程よいところで止めとけよー!!無理はすんなーー!!」
そんな言葉がコーチから掛かるが労太はペターンとお腹を地面につけるのだった。
体が柔らかい労太であった。
「軟体動物か!!」
「次はキャッチボールだ」
「「「やー!!!」」」
そんな掛け声とともに野球少年たちは広がり,キャッチボールを始めた。
何か宗教的な怖さを感じた労太だったが
「労太くん,キャッチボールをしよう」
コーチにそう言われたので渋々グローブを着けて,グラウンドへ出ていった。
「行くよー,労太くん」
コーチがそう言ってボールをふんわり山なりに投げた。
山なりのボールは労太の頭の上を超えていきグラウンドの隅にある茂みへと入ってしまった。
「ごめんよ,労太くん」
コーチはそう言って近づいてきて
「ボール探しに行くか」
と言ってきた。
オマエのせいなのに何で自分まで探さないといけないんだと労太は思ったが,しょうがないので茂みへと向かう。
「ボール無いなぁ」
「ボール無いですね」
などと会話をしているがインドア派の労太は虫が怖いので真剣には探していなかった。
「ボールありました」
逆に茂みに近づかなかったからかボールを見つけた労太はサッとボールを取り出す。
ボールを見つけてホッとしていたが,ボールの表面に虫がついていた。
「ぎゃーーーーーーーーー!!!」
労太はそのボールを思いっきり放り投げた。
「強肩すぎひん!!?」
「ボールを適当に放り投げたらだめだろ。他の人に当たったらどうするんだ。今回は当たらなかったから良かったけど,次からはやめろよ」
コーチにそう言われた労太は
「虫が怖くて...ごめんなさい」
言い訳をしかけたが,素直に謝った労太である。
やればできる子,労太である。
「次はバント練習」
「「「やー!!!」」」
またしても宗教的に広がっていく少年たち。
「バント練習は三人でやるから一緒にやろうぜ,労太」
善助に誘われたので
「やー!!!」
と叫んで労太も一緒にグラウンドに出ていく。
「何,叫んだんだ?労太」
善助に怪訝な目で見られた。
善助たちの真似をしただけなのに何か違ったのだろうか?
よく分からない。
「とりあえず労太からやってみ」
善助にそう言われたので,労太はバットを持った。
「行くぞ,労太」
善助はそう言って,ボールを投げた。
その球をバントしようとしたとき
「痛あーーーーーー!!!!」
指がバットとボールに挟まれたのである。
「痛い!!!」それしか考えられなくなった労太はバットを持ったまま走り出した。
労太はバント練習をしている他のグループの中に飛び出してしまったが,ボールが飛んできても全てバットで弾き飛ばし,指以外は無傷だった。
「バットコントロールの神なのか!!?」
「指は大丈夫か,労太。」
「はい,痛みは薄れてきました」
「バットの持ち方を教えてなくてごめんな」
「いえ,指をピッチャー側に丸出しにしていた自分が悪いので」
そんな会話のあと,もちろん練習中のグループの中に飛び出したことを怒られた。
「次はバッティング」
「「「やー!!!」」」「やー!!!」
小さい声で言ってみると
「労太!!良いじゃねえか!!」
と善助に言われたので
「やー!!!」
と返すと
「何でここで叫ぶんだ?」
...分からない。
「「「やー!!!」」」ってなんだ?と理解に苦しむ労太であった。
とりあえずライトの守備についた労太だが,ボールが飛んでこない。
イテローと同じ守備位置だからと言われ着いたのだが,ボールがとにかく飛んでこない。
飛んでこないので労太はのんびり日向ぼっこをした。
そして数十分がたった頃,打席に善助が入った。
「カキーーーン」
こっちへ打ってきた。
日向ぼっこの邪魔をするなと労太は思ったが
「そういえば野球してたんだった」
と労太は思い出したのである。
急に球が飛んできて驚いたがなんとかキャッチする。
「労太ナイスキャッチーーー!!!」
なんて声が上がったがのんびり日向ぼっこをしている方が良いなと思った労太であった。
それから少しして労太の順番が回ってきた。
自分のバッティングピッチャーはコーチだったが隣のバッティングピッチャーには善助がいる。
日向ぼっこを邪魔されたと思っている労太は善助にボールを当ててやろうと思い,打ち返した。
綺麗なナイナーが善助を襲ったがバッティングピッチャーの前にはネットがあるので当たらない。
それならと労太はフライを打ち上げる。しかし守備についている人がフライを取りに行くので当たらない。
しょうがないので労太は善助の前のネットに全球ライナーで打ち返したのだった。
「お昼休憩!!」
「「「やー!!!」」」
「飯だーーー飯ャーーー!!!弁当ーーー!!弁当ーーー!!!」
労太は大喜びだった。
「労太,このチームお昼はおにぎり以外禁止だぜ」
「なにその宗教?」
「シュウキョウ...?何言ってんだ労太」
「いや...なんでもない。ところで善助,知らなくて弁当持ってきちゃったんだけど」
「まぁ,今回は初めてだし,しょうがないんじゃない」
「そうだよなー」
どさっ!!!
「なんだ!!それは!!!」
「んっ???弁当だけど」
「「「弁当!!!」」」
善助だけじゃなくみんなが固まってしまった。
五重の弁当を見て。
何を驚いているんだろ???
「善助たちのおにぎりもおいしそうだな。具は何入れてんだ?」
「ん...あぁ...唐揚げとかウインナーとかかな」
「は!!?」
「なに驚いてんだよ。弁当禁止だからおかずをおにぎりに入れるしかないだろ」
「......まじか!!天才やん!!!」
「おれの唐揚げ5つあげるから,その唐揚げおにぎり1つ頂戴」
「唐揚げ5つってオマエの唐揚げが無くなるんじゃ...」
「一段全部唐揚げだから5つくらいじゃなくならないよ」
「は!!?」
そんなこんなで善助と互いの弁当に驚いたり,弁当交換?したりしてお昼休みが終わった。
お昼後もランニングから始まるが...
「いーち,にー,いちにーさんしー...」
「ちょ...無理コレ...」
やっぱりダウンする労太。
「労太,オマエ足早いのになんでや...」
「無理です,コーチ。走れません」
「ランニングは野球の基礎やで」
「野球怖いぃぃぃ...」
そう言い残して,ダッシュで逃げ出した。
「労太,オマエ...走れるやん......」
その後も走塁練習やら守備練習やらをしたが,ことごとく労太が問題を起こしていった。
練習後...
「労太,オマエよくやったよ。オマエは今日で南田ベアーズを卒業だ」
「コーチ,ありがとうございます」
「「「すげーーー!!!」」」
「みんな今までありがとう」
こうして労太の野球ライフが幕を閉じたのであった。
「おい,善助。運動神経がいいやつスカウトして来いって言ったけど...もう少しまともな奴いねぇのか???」
「コーチ,そういう人はだいたいもう何かスポーツやってるので...でも労太は運動神経メッチャ良くないですか?先週,サッカーの方にも顔を出して,練習試合でハットトリック決めたらしくて...」
「あいつスゲーな...でも問題ありすぎや。あいつがいるとチームが滅茶苦茶なるぞ」
「そうですね。サッカーの練習試合中,飛んできたボールが顔に当たって,走り出してゴールポストを破壊したと聞きました」
「んっ!!?ゴールポスト破壊!!!」
「はい。だからコーチ,今日の労太はまだましの方ですよ。けが人も道具の破壊もなかったんですから」
「善助,何であいつを連れてきたんや!!!よく聞け...二度とあいつを連れてくるな!!!!!」
「やー!!!」
「分かってもらえてなによりだ」
「そういえば今日,体験に行ったんだよな???入る前に卒業って何なんだろう???まぁ,どうでもいっか!!」
こうして労太の伝説がまた一つ増えたのだった。
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最後までお楽しみいただきありがとうございました。
もしよろしければ評価のほうをよろしくお願いします。
また,感想等もお待ちしております。
よろしくお願いいたします。
労太の一日 ~野球をやってみた~ 伊藤山愛 @itoyamame
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