「おしゃべり」
江戸文 灰斗
流れ星のきみ
「あっ、流れ星。ねえ薫、みえた?」
「えっどこ?」
「ほらあそこ」
「穂乃香、あそこじゃわかんないよ」
「もう、あそこだって。あーそーこー。指させばわかるかな。ほら」
「ほんとだ。あっ、今も流れた。確か今日しし座流星群の日だっけ」
「えーっと、多分そう」
「ははは、何そのふわっとした感じ」
「いいでしょ、綺麗なんだし」
「それもそうか。穂乃香はなにか祈ったの?」
「ないしょー」
「うわぁ、あざと女子っぽい」
「最近流行ってるんだってあざと女子」
「聞いた事ないけどなぁ」
「話変わるけど。流れ星ってさ、流れた瞬間に生まれたみたいだよね」
「確かに。地球上だと流れるまでは存在もわかんないか」
「でもその流れ星って流れる前から生まれてたんだよね。なんか不思議」
「なんかね。彗星があって、そこから割れたりした塵とか岩が流れ星になるんだよ」
「薫詳しいんだね」
「まぁ、好きだから」
「ふーん。まあでも、前から生まれてたってロマンチックだなぁ」
「知る前からあったってのがいいな」
「私たちが見たことないものはほんとに存在してるのかな」
「非実在性とかシュレディンガーの猫みたいな話だね」
「そういう難しい話はいいや。つまり今この瞬間私たち以外いなくてもおかしくないよね」
「ちょっと怖い話だな。今存在してるのが僕と穂乃香だけだったら」
「……まあ私はそれでも」
「それでもいいの?」
「出来れば他の人がいた方がいいけどね」
「それはそうだね」
「それにしても止まないね」
「うん、綺麗。穂乃香、不思議なこと言っていい?」
「なになに、気になる」
「僕は流れ星からきたんだって言ったら信じる?」
「何それ冗談?」
「冗談かもしれないけど、穂乃香はそれを証明できる?」
「出来ないけど」
「つまり僕は宇宙人かもしれない」
「なにそれこわ。もしそうなら今降ってる流れ星は後輩ってことだよね」
「そうだね。あっ、もうこんな時間。帰らないと」
「えっ。ちょ、ちょっと待って」
「どうしたの?」
「帰っちゃうの?」
「うん、もう夜も遅いし。もちろん穂乃香のことは送るよ」
「まだ、もうちょっといよ?」
「うん、わかった」
「……」
「……」
「ねえ、不思議なこと言っていい?」
「うん、いいよ」
「好き。出会った時からずっと。です」
「うえぇ?っえ、ええっ!?」
「ふふふ、何その声」
「いや、その、戸惑いと嬉しさがごちゃ混ぜになって。夢、とかじゃないよね」
「違うに決まってるよ。試しにほっぺたひっぱたいてあげようか?」
「大丈夫です」
「即答かい。それで、その、返事は」
「もちろん。こちらこそ」
「ふ、ふえぇえ?」
「ど、どうしたの?」
「だって、もう帰っちゃうのにまさかOKしてもらえるなんて」
「帰るのがなにか関係あるの?」
「だって、薫彗星に帰っちゃうんでしょ?」
「え」
「え、違うの?」
「はっはっはっは、ククッ……」
「ちょっと笑ってないで説明してよ!」
「だってほんとに冗談だったのに信じたなんて、あーもうお腹痛い」
「じゃあ今告る必要なかったじゃんか」
「別にいつされても迷わずOKしたよ。だって僕も穂乃香のことが好きだったから」
「えっ、いやいやそんな出来すぎな話……。ほんとにほんと?」
「ほんとにほんと」
「流星群が流れてる間に二回もびっくりしたよ」
「穂乃香の反応面白かった」
「薫性格悪いなぁ」
「いいじゃん」
「良くはないけどね。ねえ薫は私のこといつから好きなのか教えてよ。さっき私も言ったしさ。気になる」
「恥ずかしいこと聞くね」
「いいじゃんいいじゃん。さっきの腹いせ」
「性格悪いのはどっちだよ。んーと……あっ」
「なに?」
「えーとね。あの流れ星が生まれるずっとずっと前から」
「おしゃべり」 江戸文 灰斗 @jekyll-hyde
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