第57話 僕らの1週間
「それでは早速、6日前のことから話していきます」
「お願いします」
ソイントゥさんたちに、ダンジョンであった出来事について順を追って説明する。ダンジョンの入場許可証を受け取ってから、少し準備を整えてリーヴァダンジョンに向かった。10階層を巡回して、順調にドロップアイテムを入手していった。地上へ戻ろうとした時に、トラップにかかったことを話した。
「トラップ?」
「はい。5階層フロアで転移トラップにかかり、見知らぬ場所に飛ばされました」
「え? そんな、リーヴァダンジョンの低階層なんかに転移トラップが存在しているだなんて……」
聞き返してきたアンニーナさんに、当時の状況について詳しく説明した。5階層に転移トラップが設置されていたという話を聞くと、目を見開いて信じられないというような驚いた表情を浮かべていた。
ソイントゥさんは口を挟まずに黙ったまま僕の話をジッと聞いてくれていたけど、彼女の目には動揺したような様子があった。ギルド長でも、低階層に設置されていた転移トラップの存在を初めて聞いたのかな。
「それだけでなく、転移した先にドラゴンが居ました」
「え……」
「なっ……」
2人とも、伝説級のモンスターに分類されているドラゴンの名を聞いて唖然としていた。しばらく、口をポカーンと開けて何も話せないままの時間が過ぎた。
気を取り直したソイントゥさんが、僕に鋭い視線を向けて聞いてきた。
「そのドラゴンは今、どこに?」
「我々で倒しました」
「は?」
「えぇ!? 倒した?」
「はい。この3人で」
2人に倒したと伝えると、再び唖然とした表情。彼女たちに、ドラゴンとの戦闘について、詳しく話した。一旦ドラゴンとの戦闘は避けるように逃げて、ダンジョンの最下層を目指したこと。最下層まで無事たどり着いて、祝福を受けることが出来た。パワーアップしてから地上を目指して、ドラゴンに戦いを挑んて勝利したこと。
「これが、勝利して手に入れたドロップアイテムです」
「これは……本物ですね。よくご無事でした」
「えぇ、本当に。生きて戻ってこれて、良かったです」
ドラゴンを倒したことを証明するため、入手したアイテムを空間魔法で取り出して2人に見せた。これで奴と戦って勝ったことを信じてもらえるだろう。
無事にドラゴンを倒すことに成功したと話すと、感嘆する2人。アンニーナさんは僕たち3人で地上に戻ってこれたことを、すごく喜んでくれた。
「それで、僕たちは無事に地上へ戻ってこれました。地上に出てきてすぐ、ギルドへ帰還報告しに来た、というわけです」
「なるほど」
ざっくりとだけれど、僕らの1週間について話し終えた。ダンジョンの中であった出来事について、話を聞き終えたソイントゥさんは腕を前で組んだまま目を閉じて、ウンウンと頷いていた。僕が話した情報を、じっくり整理しているのだろう。
「1つ、伺ってもよろしいですか?」
「はい、どうぞ」
話した内容について、アンニーナさんから質問される。疑っている、というよりも情報をしっかりと確認しておきたい、という感じの聞き方だった。
「そのトラップで転移させられた先に、他の冒険者は居ませんでしたか?」
「いえ、転移された先には僕たち以外は居ませんでした」
転移した先に待ち構えていたのはドラゴンだった。奴は、先に誰かと戦闘している様子はなかった。だけど、気になることはある。
「ただ……」
「ただ?」
「死体のようなものは見かけました」
「「え?」」
僕の言葉に、クロッコ姉妹が驚いた声を上げる。そういえば、彼女たちには報告をしていなかった。僕の見間違いかもしれないし、困難な状況で不安を煽るような事を伝える必要は無いと判断したから。
「ただ、ダンジョンの中で発見したので本当に死体だったのか……」
「ダンジョン内では、生命力が失くなれば光の粒子になって消えていくはず。なら、それは見間違いでは?」
アンニーナさんは、見間違いだろうと指摘する。僕も、その可能性が高いだろうと考えていた。しかし、ギルド長であるソイントゥさんの意見は違った。
「過去に何度か、死体が消えずその場に残ったという報告を受けたことがあります。その時は、冒険者の仲間たちが地上まで運んで弔ってあげたという話でした」
「ありえない話、ではないということですか」
「残念ながら」
僕たちと同じように転移トラップにかかってしまい、ドラゴンに殺されてしまった冒険者たちが居た可能性がある。あまり考えたくない、嫌な可能性だった。その場に居る者たちの表情が暗くなる。
***
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
ページ下にある、★で称えるで星をつけて頂けると、創作活動の励みとなります。
本作品を読んで、面白い、早く続きを読みたい、と思って頂けたなら気軽に評価をぜひ、よろしくお願いします!
【未完】大魔法使いの転生エルフ~超希少価値な男性エルフの冒険~ キョウキョウ @kyoukyou
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます