先の戦争で負傷し、身体の一部を機械に置き換えざるをえなくなった退役軍人・イヴァン。しかしイヴァンが先の戦争で失ったものは、身体の自由だけではありません。そして彼が、治安の悪い街で出会った少女・スノウ。スノウもかつて大切なものを失い、また、現在も失い続けています。
イヴァンがスノウの住む街で落としてしまった義眼には、知らされていない大きな秘密があるようです。けれども取り戻しに行った義眼は、何故かスノウの手に。そこから、2人の惑星をめぐる旅が始まります。バトルあり、陰謀あり、過去のしがらみありの展開に、読むのが止まりません。旅の果てに明かされる真実とはーー。
大切なものを失った2人がそっと身を寄せあい、時にすれ違い、補いあいながら旅する日々が、美しく切なく描き出されています。2人は喪失の痛みから恢復することができるのでしょうか。是非お読みください。そうして、降りしきる真っ白で清らかな雪に埋もれましょう。
傷痍軍人イヴァンと娼婦の少女スノウが出会い、ふとした切っ掛けから旅に出る。
往く先々で戦争の爪痕を目の当たりしながらも次第に惹かれ合う二人だったが、イヴァンの欠落した記憶がある謀略へと結び付いていて——。
物語は宇宙戦争後の世界を舞台にしたSFですが、理解が難しい科学考証や設定などはストーリーに関わっておらず、純粋な恋愛ドラマ&ミステリーとして楽しめます。
W主人公の二視点が各話交互に入れ替わる形式ですがシームレスに時系列が繋がっており、細やかな心情変化と少しずつ明らかになる謎が物語をグイグイと引っ張るのでダレ場がありません。
約十万字超ともう少し長くても良いかなと思わなくもないですが、気持ちよく読める分量でとても良かったです。
主人公二人には「ある部分」で大いに焦らされますけどね…… (^^;
戦争で顔の半分と記憶を失った元軍人のイヴァン。
物語は彼が意識を取り戻し、そしてその失った半分の顔に嵌められていた義眼を失くしてしまったことをきっかけに、スノウという少女と出会ったところから始まります。
瓦礫の山で日々鉄くずを拾っていたスノウは、たまたま見つけたイヴァンの義眼を綺麗な石だと思い、指輪に仕立てていた。貧しいけれど純粋で可憐に見えたスノウには、しかしそれだけでなくもっと苛酷な秘密が……。
イヴァンは彼女に望まれるままに彼女をその星から連れ出し、あてどない旅を続けるうちに、やがて自身の失われた記憶と残酷な運命と向き合うことになる——。
失われた過去に苦悩しつつもスノウを守ろうとするイヴァン、そんな彼に惹かれ、ひたむきに想いを向けてもなかなか受け入れてくれようとはしない彼に複雑な想いを抱きながらも、献身的に尽くすスノウの姿はあまりに健気で、見守っているこちらの胸が痛むほど……。
戦争、特に「戦後」という重いテーマを扱い、仄暗い予感にどきどきしながらもこの物語はどこへ行くのだろうと読む手が止まりませんでした。
多くの困難と謎を乗り越えて、二人がたどり着いた運命の果て、ぜひたくさんの方に見届けていただきたい物語です。