7
──そして、今に至る。
部屋の隅には座るところがなくなった霊の彼女が佇んでいる。出会った当初と見た目は変わりないはずだけど、僕には彼女が日に日に綺麗になっていると思えた。
僕は、若干殺風景になった部屋の中央で彼女の物だったアンティークな白い小ぶりの椅子の上に立ち、天井からぶら下がるロープの輪っかに首をくくり、不安定な足元で身体を揺らしている。
傍には彼女がいる。
このままの状態でいるのもいい加減に終わりにしよう。
今度の今度こそ覚悟を決めて、僕は足元の椅子を蹴り飛ばした。とたんに首元のロープには僕の身体の全体重がのしかかり、水の中にいるわけでもないのに呼吸をすることができなくなった。
意識が飛びそうになりながら、苦しみにもがいていると、やはり失敗作のDIYであったのか、天井の穴に通したロープはするりと抜けて、ロープにぶら下がっていたはずの僕の身体は床に叩きつけられた。
首にはロープが締まっていないはずだけど、しばらく呼吸ができなかった。
ようやく新鮮な空気を肺に取り込むことができて、でもすぐに嗚咽した。
この時また新たな矛盾に気付いた。
これまで屁理屈を並べて死ぬことを必要と感じていたけど、どうやら僕の身体は自然と死ぬことを拒んでいたようだ。それに死にきれなかったこの無様な状態に「助かった」と心底思ってしまった。
すると「ふふふ」と微かに女性の笑い声が聞こえた。
部屋の隅に佇む霊の彼女が笑っていた。
初めて彼女の声を聞いて、僕は驚いた。
ただその髪の隙間から覗く笑顔が、これまでにない、
そして彼女は消えた。
僕には分からない。僕にはまだ「死」は程遠いものかもしれない。
だけど死ねない そのいち @sonoichi
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