第11話:断罪

「さて、この証言を前にして、まだ何か言う心算なのかアマニ伯爵」


 サーリン王太子の言葉は氷のように冷たいです。

 私が襲われそうになったことを聞いて、剣を取って飛び出そうとしたと聞いていますから、その怒りは相当なモノですね。

 特に誰かを好きになった経験がないので、王太子の気持ちはよく分かりません。

 幼い頃の初恋相手をそこまで想えるものなのでしょうか?

 国王陛下と王妃殿下の怒りを考えると、私には重すぎる愛です。


「しかしながらサーリン王太子殿下、相手は下級貴族や士族の令嬢、身分の高い私達が遠慮する必要などないと思うのですが……」


 ああ、ああ、ああ、アマニ伯爵はとても愚かですね。

 この状況でそんなことを口にしたら、サーリン王太子がどんな返事を返すのかくらい、少し考えれば分かるはずです。

 それが分からない程度の男が、多くの金を手に入れているという事は、権力を使ってとても酷い事を繰り返していたという事です。

 ムハメドフが愚かなのは、この父親の血を受け継いだせいなのかもしれません。


「皆の者、今のアマニ伯爵の言葉は聞いたな」


「「「「「はい、聞きました」」」」」


「では、身分の高い私は、身分の低いアマニ伯爵に遠慮する必要はないな」


「「「「「はい、必要ありません」」」」」


「なっ、そんな、殿下、今のは、うっぐっうううううう」


「アマニ伯爵、お前の息子は、伯爵令息の命令だと言って、子爵令嬢や男爵令嬢を士族の取り巻きに犯させていたな。

 だったら私が王太子の命令として、奴隷にお前を犯させるのも許される。

 ムハメドフとこの男を男娼宿に連れて行き、死ぬまで働かせよ。

 一年後まだ生きているようなら、豚と一緒に糞尿を餌にして飼え。

 二年後にまで生きているようなら、八つ裂き刑で殺せ」


「「「「「はっ」」」」」


 サーリン王太子は、ウェイフ卿の決闘で殺してやる思いやりが気に喰わないようで、徹底的に辱めて殺す心算です

 随分と残虐な刑ですが、可哀想だとは思えないのですよね。

 私は色々な事を見て心が荒廃してしまったのでしょうか?

 問題は、このサーリン王太子の決定を国王陛下が承認されるかです。

 承認してしまうと、今まで娘の恥を秘密にしていた貴族や士族の事が公になってしまいますし、認めなければサーリン王太子権威が下がってしまいます。


「サーリン王太子殿下、辱めを受けた令嬢に対する配慮がないのは、私には情け知らずに思われますが、本当にやるのですか?」


 私の言葉を聞いてサーリン王太子の挙動が急に怪しくなりますた。

 別にサーリン王太子の事を思って口にしたわけではありません。

 私がらみでサーリン王太子が失策してしまうと、国王陛下と王妃殿下の恨みが私に来るのが嫌なのです。

 これから色々と面倒な事が起きそうですね。

 まあ、でも、サーリン王太子の恋心を利用すればどうにかなるでしょう。

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妹に婚約者を奪われ家から追放されましたが、王子様が迎えに来てくれました。 克全 @dokatu

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