第10話:これが天罰、それとも復讐?
ウェイフ卿はとても残虐な事をしているのですが、私は何も感じません。
恐怖で心が凍り付いているのでしょうか。
それとも、こいつらなら当然の罰だと思っているのでしょうか。
自分の心なのに、全く理解できないです。
ただ冷静な眼で、耳、鼻、唇と斬り飛ばされる取り巻きを見ていました。
でもそれで終わりではありませんでした。
「見た目だけが悪くなるだけで終わりではありませんよ、私はそんな優しくはありませんし、令嬢達の恨み辛みはこの程度ではすまないのですよ」
私はこの時初めて、怒号よりも優しい言葉の方が恐ろしいのだと知りました。
満面の笑みを浮かべてわざと優しい話し方をするウェイフ卿に、背筋が凍り付き、脚がガタガタと震えだしました。
十人の士族取り巻きが、一斉におしっこをちびりました。
凄い臭気ですから、中には脱糞した者がいるのでしょう。
ウェイフ卿がこんな方法をとった理由は簡単です。
こいつらに本人と家が穢された令嬢達と同じだけの屈辱を与えるためです。
「あ、う、あ、あ、あ」
多少なりとも度胸がある者がいました。
凍える舌を何とか動かして許しを請うとしたようですが、言葉になっていません。
「ふっふっふっ、嘘つきは舌が二枚あるのでしたね、二枚にしてあげましょう」
「ウッぎゃおうふッ」
優しい笑顔を浮かべながら、ウェイフ卿が十人の口を順番に開かせて、舌を縦に裂いていきますが、殺さないために切り取る事はありません。
自殺出来ずに領地や教会で暮らしている被害令嬢の苦しみを、こいつらにも味合わせるためでしょう、絶対に殺そうとはしません。
十人の顔は出血によって血塗れですが、間違いなく生きています。
こう考えると、決闘の申し込みで下顎廻りの肉を削ぎ落された貴族令息達も、絶対に死ぬ事はないのでしょう。
「ああ、そうそう、東洋には豚のような人間の四肢を切り落とす刑罰がありましたね、確かに貴男達には相応しい刑罰ですね」
ウェイフ卿は満面の笑みを浮かべながらそう言うと、情け容赦なく次々と取り巻きの手足を斬り飛ばしていきました。
どれほど技を極めたら、あのように滑らかな動きで人間の手足を切断できるのでしょうか、あまりに人間離れした技に更なる恐怖を感じました。
「さあ、もういいですよ、入ってきて止血をしなさい」
ウェイフ卿がそう言うと、ドアを開けて多くの騎士が入ってきました。
王族を護る近衛騎士隊の装備を着ていますから、王太子殿下の近衛騎士達なのでしょうか、それとも国王陛下の近衛騎士なのでしょうか。
どちらにしても、これはウェイフ卿の行いが王家の承認を得ている証拠です。
これでムハメドフとアマニ伯爵家の断罪は確実ですが、マカリ伯爵家はどうなるのでしょうか?
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