DEVIL'S PARADE -CYBER DEAMON SAGA-
And then he's gone, and the Greyhound is tracking him, sniffing what's left of him.
And then he's gone, and the Greyhound is tracking him, sniffing what's left of him.
アヴァターラの崩壊――。
猖獗を極めた都市にあって、警察とはマフィアの別称に近しい存在ではあるものの、なおざりながらも仕事の体は保たねばならぬとみえる。気だるげな顔を隠そうともしない警察官が、アヴァターラのビルの屋上で断面が整った
その奥には鉄骨が突き刺さっており、ドッグタグがぶら下がっている。月明りに手を伸ばすような鉄骨に垂れ下がったそれには、
「こりゃ、呪術だな。俺たちにできることはなにもない」
無精髭と寝癖を整えようともしていない中年の刑事がいい加減に判断し、早々に帰路につこうとする。警察機関とはいえ、魔科学については門外漢に過ぎない。もっとも、通常の殺人事件さえも魔科学由来のものと判じて捜査を打ち切られるのは、珍しい話ではない。結局のところ、彼らは仕事をしたというポーズこそが求められるのであり、真面目に捜査を行う気など毛頭ないのだ。
「呪術? 本当にそうかな?」
中年の刑事――
「?」
まさか、ここはとっくの昔に呪術的汚染を受けていて、魔物が発生しつつある異界なのだとしたら……。尋常な常識や法則さえも通じぬ異界と化した地域は封印せねばならない。侵入した者を含めて、だ。だが、ファウストカウンターでは、それほどの魔咒線量は検出されなかったはず――。
背筋に怖気が走る。
「まあ、そんなに驚くなよ。
ねっとりとした粘性の声。肩を叩かれた
「
首を巡らすと如何なる身のこなしか、察知されることなく背後から背後へと回り込んだ
高級なスーツを着込んだ捜査官はそのスタイルもあって、流麗な印象を受けなくもないが、アイマスクで隠された両眼がそれを打ち消している。不気味な男だ。魔科学関連の事件を追う、特別捜査官はつい先日アヴァターラの捜査のために
「確かに、これは呪術的な痕跡が残っている。ただ、かなり痕跡自体が少ないのが気になるが……」
宙を仰いで、鼻を鳴らしながら特別捜査官は告げる。鋭敏な感覚は電子的な拡張がなされているという噂もあるが、真偽の程は定かではない。
「
無言で受け取った特別捜査官は二、三言葉を交わすと、端末を返してきた。
「捜査対象の変更が署長経由で伝わってきた。短い間だったけど、じゃあな。
結局、何をしに来たのか、
* * *
口笛を吹きながら、
「いらっしゃいませ」
初老の声。ゆるやかに流されるクラシックなジャズ。色境には映らなくとも、この店が初老のマスターの自慢の城であることは、わかる。大気に満ちる空気がそれを肌感覚で伝えている。
「先客が、いたのかな?」
目敏く――という表現が適切かはともかく、
「ええ、友人が遠くに行くそうなので、無事を祈って一杯を」
「ブラッディマリーか」
血のような粘りと赤から付けられた「血まみれメアリー」の名を持つカクテル。もう
「よくおわかりで。お客様? 何かお作りしましょうか?」
「そうだな。では、グレイハウンドを頼む」
DEVIL'S PARADE -CYBER DEAMON SAGA- 活動休止 @WizardFujii
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