渋く、鋭く、そして滾る、これはオトコの刻む痕。
泥臭く、血なまぐさく、鈍色の鉄騎が駆け抜けます。
しかし。
鉄の火花を散らすその戦いは英雄より熱く、
硝煙の匂うその臨場感は魔法より鮮やかに、
胸へとその存在を刻んでやみません。
かと思えば。
泥臭い世界で生きるヒトの息吹。
生き馬の目を抜く中に垣間見える心の温度。
死と暴虐に近しいからこそ浮き上がる生活感。
そのコントラストは渋い色を伴って読む者に痕を残します。
硝煙の匂い。鉄の火花。
そこを地獄と人の言う。
渦巻く闘争、凝る謀略、堕ちてなおヒトの業が咲く。
されどそこでヒトは生き、あまつさえ情を投げ交わす。
死の陰の生、生在るがゆえの死。
血は人の証か、死の徴か。
『機神神話』
撃ち交わす鉄に血が滾る。
腕の立つパイロットに操られた小型ロボが、冷徹に夜間強襲をかける――――
物語の幕開けを告げるシチュエーションからして熱いのですが、この作品のロボ描写はとにかく巧みで濃ゆい!
機動すれば散る火花、発砲すれば出る薬莢。
文面から滲み出る濃厚な修羅場の香りには、非常にゾクゾクさせられます。
ハードボイルド且つサイバーパンクじみた退廃的な都市の空気感が、オールドテイストのSFを感じさせる仕上がりとなっていて素晴らしいです。圧倒されました。
是非、皆さんもご一読を!
――17.11/25追記――
第一部読了。
ただただ、圧倒される… この物語のなんと、男くさく血生臭く野蛮で醜悪で… そして怪しく輝いていることか!
語弊を恐れず言うならば、このフェイハイシティに人間なぞ一人も出て来ないかも知れません。人を捨てた獣、人を解脱した獣、人を超越すべく作られた者、人ならざるモノ。恐るべき闇鍋世界を沸騰させて繰り広げられる殺し合いこそが、あるいはこの輝きの本質なのかも知れないと感じました。
素晴らしい闘争賛歌だった… 闘争に飢えた方は、是非ご一読を!